Night Doctor 夜の闘い⑵ (ページ11)

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Ep.60 ページ11

『…わかりません。
一時的なものの可能性もあるので、
なんかのきっかけで思い出すこともありますし、
急に、直近に過ごしたことを
覚えていられなくなることもあります」

風斗の母「病気を受け入れて闘ってきたあの時間は
確かに忘れたいものかもしれないけれど、
また絶望して変なことするのだけは
なんとしてでも止めたいの。
本当にAちゃんに頼ってばかりでごめんね」

『いえ。
たとえ、風斗が私を忘れるようなことがあっても
ちゃんと側にいますから。
仕事終わったら急いで行きますね』

.

.

電話を切ってから
携帯で撮っておいた結婚式の誓いの言葉を再生する。

〜〜
『風斗。
あなたは私を妻とし、
その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか？』

風斗「誓います。
A。あなたは…こんな俺を夫と認め、
この俺の命が消えるその時までは
夫婦として一緒に生きることを誓ってくれます…か？」

『…(何度もうなづく)…はい、誓います』
〜〜

喋るのもぎこちなくなった風斗の
精一杯の言葉に一筋の涙が溢れる。

ッガチャ

屋上のドアが開いて入ってきたのは
成瀬先生だった。

さっと涙を拭ってから

『…な、成瀬先生…！

…日向くんを助けてくれて
本当にありがとうございました…』

成瀬「別にお前たちのためじゃない」

『素直にお礼言った時くらい受け取ってくださいよ…』

成瀬「なぁ、さっき流してたの、なんだ？」

『えっ？』

成瀬「お前、結婚したのか？」

『…はい。この間、お休みいただいた時に』

成瀬「なんで言わない」

『…』

成瀬「籍も入れたんだろ？」

『籍は…入れてないです…
彼には入れたと言ってありますが…』

成瀬「もうすぐなのか…？」

『…はい。もうすぐ、です…』

言葉に出したら現実を突きつけられて、
また涙が出そうになる。

成瀬先生は私の顔を見ないようにしてくれたのか、
向こうに身体を向けてくれた。

成瀬「…メール見た」

『え？』

メール…あ、送った資料か。

成瀬「ったく、お前ら、
人のプライベートまで入ってきやがって」

『な、成瀬先生だって、十分
私のプライベートに入ってきてませんか？』

成瀬「別に入ってねーだろ」

『…でも、成瀬先生だけですよ。
風斗の顔見たのも、結婚したこと知ってるのも』