結婚相手募集され中2《サバイバルウェディング》

温かい人 ページ30

「何があった…の？」



祐一「花屋とケーキ屋さんに行って
それぞれを買った帰りに、
自転車のお婆さんが転倒してて。
どうやら猫を避けようとして、転んだらしい。

救急車は携帯なくて呼べないのもあったし、
自転車もあったから、
自転車押しながら近くの病院までおぶって、
お婆さんを送り届けて帰ってきた」



なんともすごい話だ。

でっち上げた話と思う人もいるかもしれないが、
祐一さんは目の前でそんなことがあれば
素通りするタイプじゃないのは
私もわかっているつもりだ。



「お婆さんの怪我は大丈夫だったんですか？」



祐一「うん。ちょっと足を捻っていたから
安静にするように言われていたよ。
自転車は当分乗れないと思う」



私は祐一さんの腕にぎゅっと捕まって、
「お婆さんもだけど、
祐一さんも無事で良かった…
おかえりなさい」

私の精一杯の労い。




祐一さんは私の頭を撫でると、
心配かけてごめんねと呟いて
私の頭にキスを落とした。


「祐一さん…！場所を考えて下さい！」

私は小さな声でたしなめた。




ちょっとだけ車内のピリピリが消えたけど、
これから色んな問題が
降りかかってくることが予測出来て、
私は1人身震いをした。


祐一さんはそんな私を見て
大丈夫、大丈夫…と自分の方に引き寄せて
身体をさすってくれた。





…病院到着。



コンコンコン、
病室に入ると、祐一さんのお母様が
パタパタとやってきた。

祐一母「あ、着いたのね。
ちょっと向こうで話すわ。
Aさんも心配かけちゃって
ごめんなさいね」




流石に私はついていくわけには行かず
病室に残った。


「柏木社長、川村です。
お身体はいかがですか」




柏木父「ああ、君か。
わざわざ駆けつけてくれたのか、
心配かけて申し訳ないな。
この通り、ピンピンしてるよ。
だから、安心してくれ」




そう言って笑う柏木社長の顔色は
とても健康とは言えなかった。
ずっと無理していたのだろう。


「…どうか、お身体大事にして下さいね。
私にとっても大事な方なんですから」




柏木父「ははは。嬉しいことを言ってくれるね。
祐一とは仲良くやれそうか？」




「…少しずつお互いを知っていけたらと
思っています。
祐一さんが感情表現豊かなのは、
お2人の温かい愛情の中で
真っ直ぐにお育ちになったからだと
常々感じています」




柏木父「なんだか照れるよ。
君も充分真っ直ぐな人だ。
だからこそ、君に祐一を任せたいと
思ったんだからね」

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