結婚相手募集され中2《サバイバルウェディング》

泣く理由 ページ15

もちろん親御さんはすぐに謝ってくれたし、
店員さんも駆けつけてくれたけど…
この濡れた服でどうやって出るのよ…、と
仕方なく、家族に電話しようと
お手洗いの方に立った時。




え、Aさん？



声をかけられた。

振り向かなくてもわかる、この声。




「すいません。急ぐので」

そう言って私はお手洗いに駆け込んだ。






…やっぱり祐一さんだった…。


なんだかわからないけど、鼻がツンとする。

泣きたくなんかないのに、
じわりと目に浮かぶ涙に対して
私は混乱していた。




とりあえず、ずっとここに
居るわけにもいかないけど
見た目に無頓着だった私でも
流石にビショビショのスカートで
外を歩けるほど、心臓は強くない。


とりあえず、家の運転手に連絡して
近くのホテルに迎えに来てもらうように
連絡をした。


検索すると、このお店の裏あたりに
ホテルがあるらしい。




一度頰を叩いて気合を入れると
お手洗いから出て真っ直ぐに会計に向かう。



祐一「Aさん、大丈夫ですか！？
お一人なら僕、何か手伝えることあれば…」




笑顔を作って
「大丈夫です。お連れの方とごゆっくり」
そう言い放ってホテルまで走った。








我ながら性格悪いと思う。
ホテルの手続きを済ませて部屋に入った。




なんなのよ、もう！


そう呟いて私は頭からシャワーをかぶった。

なんでこんなにショックを受けているのか、
なんで涙が溢れるのか、

…


私はもう、
この感情を認めざるをえないと思った。


だって、
泣いたことがないくらいの私が
たったこんなことで
涙が溢れて止まらないのだから。







やっぱり祐一さんって遊び人なのよ、
取っ替え引っ替えなのよ、
私のことは海外進出のための道具なのよ、




自分でも卑屈過ぎて笑えてくる。
でも、今の私はやり場のない気持ちを
立て直すには必要だった。







髪を乾かし、ベッドに横たわる。


数十分した頃、携帯に
運転手の片瀬さんから連絡が来た。

自分は社長の送迎を頼まれてしまったため、
家の車でバイトの男を向かわせただって。

ホテルに着いたら、090-xxxx-xxxxから
私の携帯に連絡を入れることに
なっているらしい。





まあ、なんでもいいや。

とりあえず、
優璃の服を持ってくれるらしいから。







私は携帯が鳴るまで寝ることにした。






川村Aさーん、

遠くで声が聞こえる気がするけど
寝ぼけてるからかよく聞こえない。

でもまだ、携帯鳴ってないよね…

バイトくん→←夢と現実

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す