11話目 ページ13
｢どうしたの？｣
後ろから掛けられたお兄さんの声で意識が戻ってくる。
聞くなら、今しかない。
『お兄さん』
『昔、ここで私の事助けました？』
お兄さんの顔が悲しそうに歪む。
その顔のままお兄さんは1度だけ頷き、私の肩に手を置いた。
｢うん、助けた｣
やっぱり、あの子は私であってたんだ。
私がお兄さんに詳しいことを質問しようとすると、お兄さんがそれを遮る。
｢Aちゃんは、本当に思い出したい？｣
どこか不安そうなお兄さんの表情。
でも、私の決意は揺るがない。
なんとしてでも過去のわたしを救ってあげなきゃ。
しっかりと私が頷くと、お兄さんは小さく微笑んだ。
｢そっか。じゃあ、僕も一緒に行くよ｣
｢知ってる人は多い方がいいでしょ｣
『！、ありがとうございます』
確かに、過去のことを知ってる人は多い方がいいに決まっている。
お兄さんの提案に私が頷き、2人で実家への道を歩いた。
＿＿
お兄さんと2人で実家へいくと、幸運なことに2人とも外出はしていなかった。
突然の来訪に驚いてはいたものの、歓迎してくれた両親は本当にいい人なんだと思う。
｢僕がご両親には説明いておくから、今のうちに白兎君を｣
お兄さんの登場に若干混乱している両親は彼に任せて、私は白兎に電話をかける。
さっきとは違いすぐに電話に出てくれた彼は、今さっき大学の授業が終わったところなんだそうだ。
事情を軽く説明すると
｢俺が行っても意味無いかもしれないけど、一応行くね｣
との言葉。
ありがとう、と言って電話を切る。
それから10分程だった頃。
若干息切れをしている白兎が私の実家に到着し、5人でテーブルを囲うように座った。
｢A、思い出したいって本当？｣
母が心配そうに私を見る。
『うん。いつまでも逃げてちゃいけないから』
私がそう返すと、母は｢そう｣と溜息をつき
父の顔を見る。
父は母と同じく心配そうな顔をして私に告げた。
｢Aがいいなら話そう。でも、無理はするんじゃないぞ｣
うん、と私が頷いたのを確認し、父が口を開く。
でもやはり怖いものは怖くて、隣に座っている白兎の手をギュッと握った。
白兎も握り返してくれて、僅かに安心する。
｢小さい頃、と言ってもお前が小学6年生の頃だったんだがな｣
父は、小さく息を吸う。
そしてまた、重々しく口を開いた。
｢お前は、誘拐されたんだ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時：2020年7月30日 21時
