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◇37 ページ37
来世は、絶世の美女に生まれて。
すごく好きになった人に、すぐ振り向いてもらおう。
蝉の鳴く声を聞きながら、畳にだらんと寝そべって考える。
あのあと、走って走って。
逃げたんだけど。
潤ちゃんの足に速さに、あっという間につかまって。
潤ちゃんが、いっぱいいっぱい「ごめんね」って言って。
二人で並んで帰った。
それから、私の家についた途端、「ニノに会ってくるわ〜」って。
とんぼ返りしていった。
なんだか疲れて。
汗ばむ体をそのまま、畳に寝転んで。
ずっとこうしている。
「ねえ」
「うえっ！？！」
覗き込んできた大野くんが。
汗が滲んだTシャツをパタパタさせながら、起き上がった私を見て笑う。
「縁側、全開だったから」
「・・・、」
「・・・謝りたくて、こないだのこと」
ズキって。
胸が鼓動をうつ。
「こないだは、マジでごめん」
頭を上げた大野くんと。目が合う。
「大野くん」
「・・・」
「好きな人にキスされて、謝られる気持ち分かる？」
「・・・」
「すごいね、惨めなんだよ」
「・・・うん」
「大野くん、」
「はい」
「全部、忘れよう」
大野くんの、目が。
私は見れなくて逸らす。
「あの日、何も起きなかったことにしよ」
「・・・」
「私も、好きじゃなくなる努力、ちゃんとするから」
「・・・」
「ちゃんと、好きじゃなくなるから。無かったことにしよう」
遠くから、声が聞こえる。
久々の、お母さんの声。
やっぱり私は、強くなんかなくて。
弱いままで。
大野くんのかけてくれた魔法は。
一瞬で解けてしまった。
恋の終わりと同時に、全部、消えてなくなった。
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作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
