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◇35 ページ35
なんだか、すべてのパズルが。綺麗にはまっていく。
大野くんの、好きな女の子。
ごめんの理由。
きっとあの子が大野くんのことを、「大野くん」って呼ぶんだろうな。
大野くんが、その女の子を。
ぐっと抱きしめ返すのが見えて。
鈴虫の声がする。
裏庭の雑草、最近抜いてないからな。
雅紀が入ってきて、部屋の明かりをつける。
そして私を見つけて。小さく微笑んだ。
「お腹すいた？」
「うーん。あんまり」
「最近食べないね。夏バテ？」
「そうかもねぇ」
大野くんは。
今頃、何をしているんだろう？
彼女と、一緒に。
私には見せてくれない笑顔で笑って。
彼女と。
幸せを分かち合っているのかな。
私を「強い」って言ってくれた彼は。
大切な人がいる。
わかっていたはずなのに。
息が詰まる。
「Aー」
「んー？」
「父ちゃんが来週船出していいって。どっか行く？」
「行こっかな〜」
「何それ」
自暴自棄だ。
完全に。
でももう。正直今は全部がどうでもいい。
彼女に。私は全部負けた。
可愛らしさも。肌の白さも。大野くんからもらえる笑顔も、気持ちも。
彼女とは、比べ物にならない。
「雅紀ー」
「ん？」
「どっか遠く行きたいね」
「なんでよー」
笑いながら雅紀が、私を見る。
なんでって。
もう大野くんのこと考えたくないからです。とか考えてると。
ため息ばかり。
「ありがとね、Aちゃん」
唯香ちゃんが、可愛いシャチのキーホルダーを私に手渡す。
「Aちゃんがずっと壁掃除してくれたからさ、だいぶ目立たなくなったよ」
「よかった」
「あとは私がペンキ塗り直すだけ。ほんとありがとう」
手の中のシャチのキーホルダーについた鈴が、リンと鳴る。
「唯香さん」
「なあに？」
「大野くんの友達、なんか来よる？」
「あ〜！うん。よく知ってんねえ。やっぱり田舎は噂が早いねえ」
「彼女？」
「う〜ん。智がさ、そういうの全然教えてくれないからさあ。よく分かんないけど。多分そう」
聞かなきゃよかった。
聞かなきゃよかった。
聞かなきゃよかった・・・。
全部、直前に。
しっかり警報はなっているのに。
後悔するのは分かっているのに。
ばかだ。私は。
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作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
