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◇26◇ ページ26
「すーいか、すーいかー」
雅紀と二人並んで。
袋の持ち手を片っぽずつ持って坂を登る。
「すいか一発で割れるかなっ？」
「えー、スイカ割りすんのー？」
「うんっ、する！絶対する！」
「二人じゃ食べきれないよー」
「明日にのと潤ちゃん呼ぶっ」
「じゃあ明日やろーよー」
「えー雅紀あした部活じゃーん」
雅紀とそんなことを言い合ってた時。
坂の途中にある唯香さんの店の前で大野くんが立っているのが見えて。
てろてろのTシャツ。
お腹をかいた時にチラッと見えた素肌は白くて。手に持ったホースからは力なく水が垂れてる。
ふと、私たちに気付いた大野くんが、小さく「あ」って口を開いて。
「大野くんだ。何してんのー？」
「水やり」
「そうなんだー！」
声に詰まって。
大野くんの顔が見れない。
「それ何？」
「これ？すいか」
「へー」
3日ぶり？
かの大野くん。
「あとで行っていい？」
「・・・え“、あ、うん・・・」
「あ、おじさんのとこ？」
「うん」
「そっかそっか。じゃあまた後でねー！」
雅紀が歩き出そうとしたのを、
立ち止まったままの私が引き止める。
雅紀が「A？」って。私を見た。
「スイカ割り、する？」
「は？」
「すいか割り。今からするの」
並んだ風鈴の音を聞きながら。
夕暮れの縁側で、大野くんと雅紀がバッドを持ってくるのを待つ。
「あんさ、」
「どしたの？」
「お前らって付き合ってんの？」
「・・・誰と、誰？」
「お前と、幼なじみ」
「雅紀のこと？」
「うん」
「なんでよ。付き合ってるわけないじゃんっ」
「ふーん」
ちりんちりん。って。
風鈴の音が間を通っていく。
「あのさっ、」
私を見た大野くんの目を。
やっぱり見れなくて。
顔を背ける。
「なんで、雅紀は“大野くん”って呼んでもいいの？」
「え、なんでって」
笑った大野くんが。
前髪をかきあげる。
そして。
「お前に呼ばれると、思い出すんだよね」って。
どこか遠いところを見ながら。
そう言った。
誰を？って。
聞かなかった。
聞けなかった。
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作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
