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◇24 ページ24
「ねー絲ちゃん」
洗い物をする雅紀の背中を見ていた絲ちゃんが振り返って。
「え？なんか言った」って言う。
「私ね、こしょばいの」
「は？」
「あるひとと、喋るだけで」
「はあ？どういうこと」
「ぽかぽかして。なんか、ほっぺたくすぐられてるみたいなの」
「・・・ちょちょちょ。なにそれ。誰」
机に身を乗り出した絲ちゃんの目が。
すごい眼力。
「・・・秘密！」
「えっ、なんで！？えっ、誰？？ねえマジで」
「嫌だ！！なんか恥ずかしいっ！！」
「はっ。え、マジ？え、マジで？」
「もーやめて！！」
「それ、どういうことか分かってる？？」
どういうこと。
どういう、こと？
笑顔が。
くすぐったくて。
笑い声が。
あったかい。
怒った顔に、
どきどきして。
逃げたくなる。
「そーんなわーけなーいよねー」
「なにしてんの」
「うげっ」
「赤信号」
「あ、」
ため息をついた大野くんが。
私の襟元をつかんでた手をぽっけに入れる。
「大野くん」
「・・・」
「ねえねえ」
「なに？」
「大野くん、くすぐったい？」
「はあ？」
「その・・・誰かと話してて、くすぐったいことある？」
「なんの話？」
「・・・なんでもない」
「あっそ」
「・・・」
「・・・あのさあ」
「どしたの？」
「その、大野くんっていうのやめてくんない？」
「えっ。なんでよ。みんなそう呼んでんじゃん」
「なんかやだ」
「えーなんでよー。超オーソドックスなのにー」
「じゃああいつらは？」
「あいつらって・・・雅紀たちのこと？」
「うん」
「それはー・・・ねえ？」
「ねえ、じゃないでしょ」
「えー。じゃあなんて呼べばいいの？」
「普通に下の名前でいいよ」
「智・・・くん？」
「・・・」
「・・・さとちゃん？」
「・・・」
「・・・さとぴ？！」
「それ普通じゃねえじゃん！」
信号が青になって。
周りの人たちが渡り始める。
また。ため息をついて歩き出した大野くんの背中に、
「智」って呼びかけたら。
大野くんが立ち止まって。振り向いて。
「普通じゃん」って。言った。
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作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
