今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:10,253 hit
小｜中｜大
◇２ ページ2
そんな私に、
「じゃあいいよ、行こ」って。
絲ちゃんが手を取る。
絲ちゃんに引っ張られて、
彼の、目の前に立つ。
長い前髪をかき分けて、私たちを見上げたその目が。
ゆっくり、瞬きして。
「大野くんって東京から一人で引っ越して来たの？」
隣で背筋をピーンって伸ばした絲ちゃんが。
すごく綺麗。
「うん」
「なんで？」
「君たちに理由を言う必要がなくない？」
絲ちゃんが。
「あっそ」ってすぐ身を翻して。
みんなのところに戻る。
そうすると。大野くんの目は、また、伏せられて。
「・・・ごめんね」
「・・・」
「誰だって、言いたくないことの一つや二つだってあるよねそりゃ」
「何？」
「え？」
「なんで、ずっといるわけ？」
一目で好きになったかっこいい彼は。
悲しい目をしていた。
「大野くんだっけ」
後ろから顔をのぞかせた雅紀が。
隣で笑って腕を掴むと。
「俺、相葉雅紀。よろしくね」
そう言うって。ぐいっと私の腕を引っ張る。
そして、私を現実に引き戻す。
だけど。
私はその、悲しい顔がどうしても忘れられなくて。
「大野くんっ！！」
両手に紙袋を抱えている彼の背中にそう投げかけると、
彼は、気怠そうに振り返る。
前髪が、頬にかかって。
「なに」
「どこらへん住んでるの？」
いつも履いていたはずのスニーカーを少し浮かせて。
なんだか少し、しゃんとしてみる。
「・・・知らない」
「あ、そっか。こっちの方の地名とか、まだ分かんないよね」
「・・・」
「じゃあ一緒に帰ろ！！！」
「え、」
「重そうだから、一個荷物持つよ！！」
彼の手から、奪い取った紙袋。
立ち尽くしている彼を恥ずかしくて直視できないでいると、ため息をついて彼が歩き出した。
「へんなやつ」
彼が吐き出したそんな言葉に、
思わずふふふと笑いが溢れる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
