転生先は復讐漫画の裏切り者でした

プロローグ ページ2

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プロローグ
　その時、白石花澄は全てを思い出した。彼女のいる世界が、前世で読んだ『教室の復讐少女』という、現代日本をベースにしたいじめ漫画の世界であることを。


　漫画のストーリーは以下のようである。綿密な計画を練った主人公、葉桜卯美が、自分をいじめたクラスメイト達に復讐していく、という復讐劇である。
　花澄は復讐のきっかけであり、最大の裏切り者として描かれている。

　転校生である卯美が花澄へのいじめを注意して助けようしたことから、いじめのリーダーである棚端游那の不興を買い、卯美は新たないじめの標的となった。
　再びいじめられたくない花澄は助けてくれた卯美を裏切り、いじめに加担してしまう。卯美は心を病んでいき、復讐を決意するという背景がある。

　花澄は今年度中に殺される。ちなみに卯美も一緒に死ぬ。
　この漫画で死ぬのは、いじめ主要メンバー女子三人、彼らに入れ知恵した男子一人。助けず遠巻きに見ていたクラスメイトも悲惨な目に遭い、事なかれ主義の担任は退職させられる。


　前世で二十数年の短い一生を終えたあと、よりにもよって不穏な世界に転生してしまうなんて。前世で人生に疲れたとき、漫画の世界に行きたいと願ったことはあったが、まさかこんな形で叶ってしまうとは思いもよらなかった。


　漫画の花澄は棚端游那にいじめられていた。
　自分に自信がない彼女は人間関係を上手く築くことができず、内気な性格が加速した。みんなから見下されているのではないかという不安が彼女を臆病にし、人間への恐怖心を抱かせたのだ。

　そんな花澄は前髪を伸ばして自分と他者との間に壁を作るようになる。彼女にとって、長すぎる前髪は自分を守る盾であった。

　そして、今の“自分である花澄”も例に漏れずいじめられている。彼女が前世を思い出したのは、游那に突き飛ばされて衝撃を受けたときだった。
　長い前髪が邪魔で視界が悪い。この前髪を心地よく感じる元の花澄と、邪魔に思う前世の記憶が混ざり合い、不思議な感覚に陥る。

　花澄が突然の記憶に戸惑い呆然としていると、いじめられたショックだと勘違いした遊那は、満足そうに去っていった。

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