第2話 ページ3
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梅雨の時期は体調が悪くなるから嫌い。
偏頭痛とか、気温の高低差などの理由で悪くなるなら寧ろウェルカムだ。私の悪くなるは根本的に異なる。
体調は万全。気分は最悪。
言ってる事が矛盾してるって自身でも思うが、病は気からとも言うし、あながち間違いでない。
結局体調なんてものは人間の感情次第で良くも悪くもなるってこと。
特に梅雨の時期は負の信念がピークを迎えるため、私が大嫌いな忌々しい奴等がそこら中に這いつくばり始める。
学校や病院なんて酷いもん。
辛酸、後悔、恥辱等々、とにかく人間の負の感情が集合する場所なんだから。
そう罵倒しながら、現在自分がいるのが病院だってのがとってもうけるけど。ハハッ。
「何一人で笑ってるんだ、気持ち悪い」
「ひっど。見舞いに来た人にそういう言い方は良くないと思いマース!」
「ケッ。大方パチンコで負けて買うもんも買えねぇから見舞いの品食いに来ただけだろ」
「なんでバレてるん。おじいちゃん怖い」
「オマエの行動パターンは単純なんだよ」
そう言って呆れたように見てくるこの人は、私のおじいちゃんではない。
近所のパチンコで偶然知り合った悠仁のおじいちゃんだ。
未成年がパチンコに没頭しているなんてどういうことだ、と説教しに訪ねたのがキッカケ。
そこからズルズルと甘えるようにこの人に世話になっている。まぁ、毎回「来るな!!」と怒鳴られてるけど。
嫌な顔はされていないから照れ隠しなんだなと勝手に解釈している。
「つーか、オマエさんハロワはどうした。今週中には仕事見つけて働き始めるとか言ってたじゃねえかよ」
「あーそれね。週一のみ働くを条件にだしたら追い返された」
ヒドイよねーと泣くふりをしながら話すと、アホかと怒鳴られる始末。終いにはクソ餓鬼と言われた。解せぬ。
相部屋の人が呼んだのか、呆れた表情をした看護師さんに「またですか、程々にしてくださいね」と注意を受け、おじいちゃんはようやく落ち着いた。
さっきまで騒がしかったせいか、シーンとなるこの空気に耐えられず、「おじいちゃん」と声をかけようとした時、弱々しい声が私の耳の中に入ってきた。
その内容にワタシは何も言うことが出来なかった。
いつもなら笑ってやった。
また男だからとか言う理由でカッコつけたいだろうって。
だけどこの時だけは、黙ってそれを受け止めるしかなかった。
これがおじいちゃんとの、最後の会話だった。
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テヌ。(プロフ) - 若葉さん» 若葉さま。コメントありがとうございます。そのように言っていただけてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2020年5月22日 0時) (レス) id: b4b50e7b68 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - この作品面白くて好きです!!頑張ってください! (2020年5月21日 8時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
テヌ。(プロフ) - 茉優さん» 茉優さま。コメントありがとうございます。また心配してくださりありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいです…!無理しない程度にこれからも頑張らせて頂きます(^^) (2020年4月20日 1時) (レス) id: b4b50e7b68 (このIDを非表示/違反報告)
茉優(プロフ) - ずっと応援してます!お体に気をつけてくださいねお大事に! (2020年4月19日 9時) (レス) id: b60e3eafa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テヌ。 | 作成日時:2020年4月12日 2時