第1話 ページ2
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「あ゙ぁクソ!何であそこで負けるんだよ」
転がっていた空き缶を蹴り上げ、近くのベンチに腰掛ける。
平日の昼時、普通なら仕事をしているせいか、道行く人たちに訝しげに見られるが、そんなの気にしていられない。
行く予定も無かったパチンコに寄り、1週間分の食費をパーにした。気分は最高に悪い。
自業自得とか知らん。
「空から金が降ってこねーかな」
カァと馬鹿にするように鳴くカラス以外、何もない綺麗な青空を睨みながらそんな事を呟く。
毎日休日の私は、俗に言うニートというものだ。
働くことを拒否した自分に、天の恵みなんて来るはずもない。人生そんなに甘くないし。
働けば解決かもしれんが、そんな事に人生を費やすなら、こうやって馬鹿やってる方がよっぽどマシだと思う。
楽な道を選べば自分が滅びる可能性が高まる?
もしそうなら大歓迎。悔いなんて一切ないし。
「あ゙ぁー金ほじい」と項垂れていると、近くから違和感。この独特な忌々しい感覚に、くしゃりと顔が歪む。
倒していた顔を上げて前を見据えれば、かちっとした立派なスーツを身に纏った男性が、蒼白い顔をしながら歩いていた。
男性に取り憑くアレは、彼の肩にしっかりとしがみつき離れようとしない。
今すぐ離さなければ危険な状態と判断できる、が…
「だから、何ってね」
他人の事を気にするほど私は優しくない。
あの男性が憑かれてても、自分に何か害があるわけでもなく、寧ろ関わったら面倒くさい事になる。
仮に私がアレを祓えるとしよう。
そこから得るものはあるのか。答えは否。
感謝もされず、何なら蔑む目を向けられるだけかもしれない。
「他人を助けられるのは優しい心の持ち主だけ」
何もせず、ただ男性が通り過ぎるのを見ていた時だった。突然彼からあの忌々しいものが消え去ったのだ。
あまりの衝撃的な出来事に理解が追いつかず、呆気に捕らわれていると、男性とすれ違うように一人の男の子が歩いていく。
一般の人と異なる量に、顔が引き攣った。まさか此処に彼等が来るとは思いもよらない。
否、彼等が回収しに来るであろう存在には感づいていたが、気にしないふりをしていたのに。
「あ゙ぁー!クソっ、今日は本当についていない」
整った顔をした男の子が歩いていく先にあるのは、この地域で有名な高校。
杉沢第三高校だった。
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テヌ。(プロフ) - 若葉さん» 若葉さま。コメントありがとうございます。そのように言っていただけてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2020年5月22日 0時) (レス) id: b4b50e7b68 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - この作品面白くて好きです!!頑張ってください! (2020年5月21日 8時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
テヌ。(プロフ) - 茉優さん» 茉優さま。コメントありがとうございます。また心配してくださりありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいです…!無理しない程度にこれからも頑張らせて頂きます(^^) (2020年4月20日 1時) (レス) id: b4b50e7b68 (このIDを非表示/違反報告)
茉優(プロフ) - ずっと応援してます!お体に気をつけてくださいねお大事に! (2020年4月19日 9時) (レス) id: b60e3eafa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テヌ。 | 作成日時:2020年4月12日 2時