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序章 ページ1

関東平野のとある街。
浮世絵町。

そこには、
人々に今も畏れられる"極道一家"があるという___








「今日も姫様は部屋に籠っているらしいぞ」

「あの日以来、病気になってしまったと…」

「何ともお労しい…。
鯉伴様がお亡くなりになってからというもの___」








そして、実父である奴良組二代目総大将 奴良鯉伴が
他界してから床に伏せる姫君が居た。









「姫様は声を失ってしまったらしい____」


















首無「姫様。失礼致します」





部屋の廊下側の襖が開くと、
首無が食事を乗せたお膳を持っていた。

夕食の時間だ。





首無「こちらに置いておきますね。
_____また、ご飯を残されて…」






昼食が手付かずで、お膳に乗っている事に気付く。

Aは目を合わせる事も頷く事も無く、
ただただ部屋の一角を見つめていた。

そんな姿を首無は悲しげに見つめる。





首無「…リクオ様が妖怪へと覚醒されました。
とても立派なお姿でした」






虚ろなAの瞳が、首無の方へ向く。







首無「リクオ様は刻々と成長されております。
あの方は何れ三代目となるでしょう。

姫様、差し出がましいかと思いますが…
二代目の事はご自身に責任を負わない下さい。
無念の思いが消えないのでしたら、
二代目が残したそのお体を…大切にして下さい。

そして、残されたこの組を…
リクオ様と共にどうか背負って下さい_________」









首無がAに頭を深々と下げる。

Aの指が僅かに動いた事等知らず、
彼は昼食が乗ったお膳を手に取ると、部屋から出て行った。

誰も居ない部屋で、
乾いた頬に一筋の涙が伝わった_______










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作者名:天天 | 作成日時:2023年7月17日 21時

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