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 第八話 ページ10

「いただきまーす」

 手を合わせてカップを持つ。うん、美味しい。
 私の周りには家族以外に紅茶を飲む人があまりいない。
 5.6年程前まで紅茶は貴族・王族が飲んでいた物だからまだあんまり広まっていないんだよ、とお母さんが前に言ってたっけ。
 ……あれ?

「どう、美味しい?」

 違和感が一瞬あったが、母の声にかき消される。
 もう飲み終わったらしいお母さんに聞かれた。

「うん!すごく美味しい!」

 と笑顔で応えた。
 
 何を考えてたんだっけ?
 少しモヤモヤしながら、最後の一口ゴクリと飲み干す。底に沈んでいる砂糖が名残惜しいけど仕方ない。

「ごちそうさまでした」

 手を合わせて立ち上がる。やっぱり母の紅茶は美味しかった。

「カップあとで片付けておくから置いといていいよ」

「はーい」

 返事をしつつ、床にクッションを置いてその上に寝っ転がる。前世ではここでスマホをいじったり、テレビを見たりするけどそうもいかない。
 だってテレビは無いし、インターネットも無い。なんだか前世で聞いた田舎から出て都会に行きたいっていう曲を思い出すけれど、ここはそんなど田舎だ。
 というわけで、私は夕飯までの時間を本を読んで潰すことにした。

「お母さん達の部屋入っていい?」

「いいけど、汚さないでね」

 お母さん達の部屋には本がたくさんある。本は、お母さんのお父さん、つまり、私の祖父に子供の時に買ってもらった物らしい。

 その祖父に私は会ったことがないのけど。私が産まれてからお母さんも会ってないらしいから存命なのかすらよくわからない。
 ちなみに、この国の識字率は平民でもほとんど100%だ。

 8才から15才までが無料で通える国立学校が、小さな街のような国に3つある。
 貴族や王族は家庭教師に習っていたり、教養や帝王学を学べるようなところにいっていたりするので全員が通っているわけではないのだけど。

 さて、何を読もうか。

「童話集、伝承、伝記、小説……キュウリ大百科?」

 一体祖父は何を思ってこれをお母さんに買い与えたんだろう。と思いつつも、そのまま憎きキュウリから視線を横にずらしていく。

「ナリフアの歴史、か。これ良いかも」

 本を引き抜き、ほこりを払う。
 本を開けば、古い紙の香りがした。


 

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ふりかけカスタード - きゅうりが死因w更新楽しみにしてます! (2017年8月21日 13時) (レス) id: f6c6c4268e (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス@桜飴(プロフ) - 従順なこいぬさん» 返信・更新が遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます、本当に嬉しいです! (2017年6月26日 21時) (レス) id: f79117ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
従順なこいぬ - 面白すぎて、夜なのに思い切り吹き出してしまいましたw (2017年4月3日 22時) (レス) id: 05eb78a7ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バンビ娘 | 作成日時:2016年5月30日 12時

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