第四話 ページ6
私の体は動かなくなってしまった。
別にリアムが魔法が使えるわけでもなく、私が呪いにかけられているわけでもない。
信じられないことが起きた驚きによるものだった。
「おーい! ミナ? 美咲でもいいんだけど。固まってないでご飯くれないかな?」
リアムが再びこちらを見つめ口を開く。こいつは今私を美咲と呼んだ。
美咲、懐かしい。前世の私の名前。
「今、みさきって言った? なんで知ってるの?」
私をよそに、リアムは赤い舌をだして毛づくろいに勤しんでいた。そして満足したのか大きなあくびをして再びこちらを見た。
「だって僕は前世の君を知ってるからね」
全く記憶にない。日本にしゃべる猫なんていなかったはずだ。
生前では妹の未来が猫アレルギーで猫を飼うこともできなかったのだから生前の飼い猫でもないだろう。
「ねぇ、リアム。あなたは誰なの?」
ようやく出た声で疑問を投げかけるとリアムの金色の目が妖しく輝いた。
「僕が名前を教えても君は僕のことをわからないと思うよ」
それでもいい、と頷く。
「僕の名前は……やっぱり秘密だよ」
リアムが目を細めてクククッと笑う。
なんだか、急に色々とどうでもよくなってきた。
とはいえ、散々溜めたくせして結局秘密というのは少し頭にくる。仕返しくらいしてもいいだろう。
「あー! そうだ、床を拭かなくっちゃいけないんだったわ。」
わざと大声でそう言って、おもむろに歩きだす。
「ミナ? ねぇ、ねぇってば!」
私は聞こえないふりをして歩き続ける。
チラリと振りかえると、リアムは心底悲しそうな顔をしていた。まるで買ったばっかりのアイスを落としてしまった時のような顔。
それを見てさらに上機嫌になった私はこの国のものでない童謡をハミングしながら歩く。
「ねぇ、ミナ! 分かった! 僕が話せる理由教えるから!」
リアムが必死に交渉する。
「それ、本当?」
私は自分でも分かるほど食い気味に返事をして振り返る。
猫のくせにリアムが大きなため息をついた。
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ふりかけカスタード - きゅうりが死因w更新楽しみにしてます! (2017年8月21日 13時) (レス) id: f6c6c4268e (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス@桜飴(プロフ) - 従順なこいぬさん» 返信・更新が遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます、本当に嬉しいです! (2017年6月26日 21時) (レス) id: f79117ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
従順なこいぬ - 面白すぎて、夜なのに思い切り吹き出してしまいましたw (2017年4月3日 22時) (レス) id: 05eb78a7ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ娘 | 作成日時:2016年5月30日 12時