第0話 転生ちょっと前 ページ2
目が覚めるというより、気が付くとといったほうが正確だろうか。
私は見知らぬ場所に立っていて、目の前には大量のキュウリを持って土下座しているおじいさんがいた。
ここは天国なのだろうか。想像してたより質素だし、人がいないけど。
変質者だったら困るが、今の私にはこのよく分からないおじいさんに話を聞くしかない。
意を決して話しかける。
「あの……」
声をかけると、おじいさんは顔を上げるなり、
「この度は、真に申し訳なかった!」
と言って再び頭を深く下げた。
なんの話かさっぱり分からない。私が憎んでいるのはおじいさんでなく、キュウリなのだ。
「すいません。なんのことでしょうか?
あなたのことは存じませんし……」
疑問を正直に口に出すと、おじいさんは唖然とした顔をした。
いや、こっちがその顔したいんだけど。
「私は、神と呼ばれるもの。
朝、君の頭にキュウリが当たっただろう。それは私の手が滑ったせいなのだ。本当に申し訳ない!」
「は?」
それに続く。言葉が出ない。
神様って本当にいるんだ。そして、キュウリの正体は神様だったのか。その2の衝撃に硬直する他ない。
「そんな……顔を上げてください」
なぜか怒る気にはならない。
そもそも神様に怒るなんて、私が存在していたのは神様のおかげだと思えば失礼な気がするから、許すしかないだろう。
ただし、キュウリは別。あいつは許さない。
「代わりと言ってはなんだが……」
と言っておずおずと大量のキュウリを差し出す神様を見て、笑いそうになった。笑っている場合じゃない、と顔を引き締める。
憎らしいキュウリを見るとその隣に手帳を見つけた。
「あの。これは?」
手に取ると、神様はようやく顔を上げた。
「それは、世界と世界を繋ぐパスポートのようなものだ。お詫びにはならないだろうが、これで好きな世界に転生できる」
手帳を開くとたくさんの世界が書いてあった。絵本で見たような世界、近未来的な世界。でも、ない。
「元いた世界には帰れないんですね」
日本も、地球も、私の知る世界は載っていなかった。
「申し訳ないが、それだけはどうにもできない。しかし、一度転生を挟めば不可能ではない」
胸がドクンと脈打つ感覚がした。
「私は、元の世界に戻れるの?」
「可能性は、ある」
それから、私は考えた。とても長い時間だった気もするし、ほんの少しだった気もする。
そして、決めたのだ。
「私は……」
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ふりかけカスタード - きゅうりが死因w更新楽しみにしてます! (2017年8月21日 13時) (レス) id: f6c6c4268e (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス@桜飴(プロフ) - 従順なこいぬさん» 返信・更新が遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます、本当に嬉しいです! (2017年6月26日 21時) (レス) id: f79117ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
従順なこいぬ - 面白すぎて、夜なのに思い切り吹き出してしまいましたw (2017年4月3日 22時) (レス) id: 05eb78a7ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ娘 | 作成日時:2016年5月30日 12時