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____声をかけられた方へ恐る恐る振り向く…
『監督生』とは私の事なのだろう。
そうじゃなかったとしてもこんな早朝にこんな寒空の下外を出歩いている人間なんてこの場では私くらいだ。
「……………?どうした、具合でも悪いのか?」
白銀の髪にキリッとした瞳、やけた肌にがっしりとした体格。そしてピンッと立った可愛らしい耳とフサフサ尻尾。
間違いない、声の正体は…____
「____ジャックくん」
突然現れたハンサムボーイにあまりの衝撃でついいつものように呼んでしまった。
ジャックくんが『監督生』のことを知っているということはつまるところ、私の前に『監督生』が意志を持って行動しており、彼らと生活を共にしていたということだ。
そしてどうやらその『監督生』は普段ジャックくんのことを「ジャックくん」とは呼ばないようだ。先程から疑念の眼差しで見つめられている。
「何だよ気持ち悪いな。何か企んでるのか?」
「あ…あはは……そういう訳じゃないけど…」
『監督生』お前普段どんな行動してたんだよ。どうやったら友達にこんなこと言われんだよ。
表で苦笑い、心の中で失笑しながら改めてジャックくんを耳の先から足の先まで拝見させていただく。
ハンサムだ。ハンサムという言葉に尽きる。3Dジャックくん、2.5次元を越えた3次元ジャックくん……汗すら輝いて見える。
「まだ寝ぼけてんのか?慣れないことして風邪ひく前に戻れよ」
そう言い残すとジャックくんはまたランニングに戻っていった。今日は休日らしいのに日々の鍛錬を怠らないあたりジャックくんらしいというか…
素っ気ない態度に見せかけて遠回しに心配してくれるところも、本当にできた子だなと思ってしまう。
悲しきかな こう見えて私は人生経験が彼らより上なのだ、どうしても近所のオバサン感覚になってしまうのは致し方がない。
「___ブェッグシンッ…!!!」
盛大にクシャミをして気がつく
___体が冷えきっている。
折角ジャックくんに声をかけてもらったんだ、風邪をひく前に寮に戻ろう。
そう思い、来た道を戻るとオンボロ寮のドアノブに手をかける。悴んだ手が痛い…
____マフラーとコートはあったものの、手袋は見つからなかったな。もう1回散策がてら探してみるか。
グリムやジャックくんというキャラに出会えたのに案外冷静なものなのだなと自分で自分に驚きながら扉を開け寮の中に入ると、何故か出た時よりも暖かい気がした………
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作者名:名無しの権兵衛 | 作成日時:2020年9月6日 4時