12話 ページ12
『ま、待って。私は中也と会った記憶がないんだけど?』
長話と思い用意した珈琲の湯気が天井に届くまでに薄く消えていく。
それを見ていながら聞いていたが、さっきから話す内容に私は心当たりがない。
もちろん彼に出会ったのは初めてだ。
カフェ?その頃の私はカフェで呑気にランチどころではなかったはず。
普通の高校生活をおくっていた覚えがない。
つまり、私は何かしらの理由でそうなっていた訳だが理由がいまいち思い出せないのがもどかしい。
「まァ、覚えてなくて当然だ。俺らが会ったのはその1日だけだからな」
『でも、私の担当だったんでしょ?どんな依頼かは覚えてない・・・というか記憶に全くないんだけどもさ、担当ならいかなる依頼だろうと依頼主に何度か会うはず』
私の記憶力が悪いとは思えない。悪いが人よりはあると思っている。
だがその何処にも会ったという覚えがないのだ。
中也はため息を零して珈琲を一口飲んだ。
「相棒がいるっつッたろ?ソイツが手前を担当した。俺じゃ解決できる依頼じゃなかったから。でも、表面上は手前の担当だった」
『ね、依頼ってどんな・・・?』
ソーサーにカップを戻した中也は目を閉じ深く息を吐いた。
「ストーカー被害」
『っ・・・』
私の思考が一瞬にして止まった。
ついでに呼吸も止まってたんだと思う。
だって、こんなにも心臓が痛くて苦しくて
『知らないよ・・・』
どうして私の知らない"私"を知っているのか。
私が覚えていないだけなのか。
それとも
「思い出したくねェんだろ」
図星で何も言い返せなかった。
それどころかその一言で確信へと変わってしまった。
私はずっと覚えてないとばかり思っていたが、本当は思い出したくないのだ。
その記憶があまりにも残酷だったから。
いつの日か調べた資料に載っていた豆知識を思い出す。
人は自分にとって不利益な情報、または嫌な記憶を無意識に頭から消し去ると。
その日以降の記憶は私には不必要とみなされた。
『それ、どうなったの?』
事件は解決したのか。その相棒とやらなら解決出来る案件だったのだろう?
なのに、
どうして
『なんでそんな顔するの中也・・・!』
「____解決してないんだよッ」
中也は全身から怒りを露わにして叫ぶようにそう言った。
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天さん(プロフ) - 小松七さん» あ、ありがとうございます!!(´;ω;`)可愛い&ちょっぴりワケありな中也書けるように頑張ります!! (2017年9月25日 16時) (レス) id: e35c262d1b (このIDを非表示/違反報告)
小松七 - 中也さんがあぁ!!え、ちょま、、、可愛過ぎだろ!凄く気になりますので更新頑張って下さいね!無理のない程度に。 (2017年9月25日 0時) (レス) id: 69007943fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天さん | 作者ホームページ:http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時:2017年9月12日 23時