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『杏奈?どこ?杏奈!!』
いない。何処にも。
必死に叫ぼうと杏奈は現れない。
でも、群がる人の中に一際目立つ男が一人いた。黒のジャージを着てフードで顔を隠した男。
全く微動だにせずただ私をジッと見つめていた。
その時、私の頭にさっきの通りすがりの会話が蘇った。
"___黒ずくめの男に連れ去られたらしいよ"
『・・・ッ!』
アイツだ。アイツなんだ。
何処にも証拠はないのに。遊園地みたいな人が集まるところだったら黒ずくめの男くらい何人でもいるだろうけど、それでも私が確信に満ちたのは
「・・・」
アイツが口の端をゆっくりと吊り上げたから。
私は怒りが収まらなくて立ち上がろうとした。
けど、私の体は金縛りにあったようにピクリとも動かない。
何故・・・
味わったこともない感覚は恐怖でしかなかった。
声さえ出せない私は、ただゆっくりとこっちに歩み寄る男を呆然と見るしか出来ない。
抗うことの出来ないこの力は、きっと
「無様だね。そんなんだから娘さん連れ去られるんだよ?」
そして男は私の前にしゃがみ込んだ。
フードの下がはっきりと見えるほど近い距離で。
そして気づいたのが"私だけじゃない"って事。
その男以外、全員の時が止まっていたのだ。
まるで一時停止を押したように誰一人動かない。
「君も災難だよねぇ。母親がポートマフィアなんかにいなければ、君はこんな目には合わなかっただろうに」
哀れみに細められた目は真っ赤な血のようだった。
その目に映る私が赤く歪む。
反抗しようとしたけど縫い付けられたように開かない口ではそれすら不可能だった。
そして動かそうとすればするほど体が痛んで目から何粒も涙が零れる。
この涙は、けして痛みからくるものじゃない。
娘を助けられずどうしようも出来ない私にだ。
「ああ、無理に動かさない方がいいよ?君の時間は止まってるんだから、それを無理に動かすとどうなるか・・・・・次元に歪みが生じて君の体はパァんだ」
クツクツとそれはそれは楽しそうに笑った。
何で・・・・・何でなの。
何で私じゃなくて杏奈なの!
『・・・ッ!』
無理に動かそうと大きく力を入れた私の体は、
パキッと嫌な音をたてた。
「ありゃりゃ。これは厄介なのを寄越したなボス」
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推しが多すぎて困ってる - やばい好き、、沼がああぁぁぁあぁあふふきょうからわたしは中原さんおしだああぁあああわあああ()(更新頑張ってください!応援してます! (2021年3月27日 10時) (レス) id: 60a485a3f1 (このIDを非表示/違反報告)
エネ(プロフ) - 設定のところが性格の所が正確になってますよ!それと、すごく面白いので、更新がんばってください! (2018年1月9日 12時) (レス) id: 24f4ffea16 (このIDを非表示/違反報告)
天さん(プロフ) - 小松七さん» 1度壊しちゃいます!やっぱり面白い作品を見ていると幸せだけではないようで、1度は壊れて絆を深められたらなぁって考えです!最後には必ずハッピーエンドにしてやります!w (2017年11月4日 0時) (レス) id: e35c262d1b (このIDを非表示/違反報告)
天さん(プロフ) - 黒帽子さん» (´;ω;`)ウッ…温かいお言葉ありがとうございます!血液型で誤魔化すのも情けなかったですよね・・・。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2017年11月4日 0時) (レス) id: e35c262d1b (このIDを非表示/違反報告)
天さん(プロフ) - みりんさん» わわわっ!ありがとうございます!やっとこさスランプから抜けましたよ!!応援ありがとうございました!よければ最後までお願いします! (2017年11月4日 0時) (レス) id: e35c262d1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天さん | 作者ホームページ:http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時:2017年3月20日 23時