天才とヤンキー (ページ14)

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練習終わり

1人で歩く帰り道

長い長い下り坂を、ボーッとしながらダラダラ歩く

オレンジが辺りを包んで、じりじり照らす

なんかつまらんなと思ったら、横山が居ないんだった

あいつは練習サボってどこ行ったんだ？

…って、別に友だちだから、ちょっと気にかかっただけやし

誰にする訳でもない言い訳を、自分に言い聞かせてる

誰に言い訳してるんや、うちは

坂道を下りきったところに、こちらの方向に向かってくる人影が見えた

逆光で影になってるから顔がわからへん

けど、オレンジの光に照らされて輝く金色の髪

｢…横山？｣

人影がうちの存在に気づく

｢あ、A｣

｢は？横山！？あんた何してるん！？なんなんその傷！！｣

話しかけてきた人影は紛れもなくあいつ

目の上の切り傷、白い腕には数えられないたくさんの痣

唇の端も盛大に切って、血が出ていた

今までよりも相当ひどい喧嘩をしてきたことがわかる

そんな姿を見てうちらしくもなく、気が動転してしまった

｢あ、…なんもないねんこれは

スマホ忘れてきたから学校戻るな｣

｢はぁ？？！こんなんでどっから歩いてきたん！これで学校戻ったらやばいて！！｣

｢どうしたん、Aらしくないな、そんな怒るなや｣

｢怒るもなにも、、もう、ちょっと来なさい｣

連れてきたのは我が家

傷の手当をしてやる

こんなん絆創膏でええやんとぶつぶつ言っている横山を無視して、ありったけの知識をあつめて止血して消毒して、、

｢…保健室の先生みたいやな｣

｢うるさい、…中学からこんなん余裕でできるわ｣

｢さすが天才やな｣

｢それは関係ないやろ｣

保健室の先生なんてとっくに帰ってるし

しゃーないから家に連れてきたけど

｢唇、ちょっと滲みるで｣

｢…おん｣

切れた唇の端を丁寧に手当していく

少し、顔が近づいた

｢痛っ｣

｢ごめんって｣

目の前で唇が動く

と同時に気づく

｢…？！
ごめん、めっちゃ近かったやんな｣

つい手当に夢中で顔が近いのを全然意識してなかったわ

｢…いや、ええわ、別に｣

飄々とした顔で言うからムカつくねん

うちが意識したみたいやんか！

｢…はい、おしまい｣

｢ん、ありがとう｣

痣のあとは残りそうやけど無事手当てを終えて

｢なんで喧嘩したんか知らんけど、無茶だけはやめてや

…心配したんやから｣