2-10 掌の温もり ページ10
頭の上の手が
柔らかくて、暖かくて
「大丈夫、大丈夫。」って言って
頭の上から手をどけると
優しい声とは裏腹に
おにぎりの包みをくしゃ、っとして
ビニール袋の中にぶっきらぼうに突っ込んだ
ふぅ
また、お茶をひと口飲んで息を吐いた
煙草を銜えて火を点けると
テーブルに肘をついて
紫煙を口から吐き出す
そんな彼の仕草から目が離せないでいたら
灰皿にぽんぽんと灰を落とした彼が
私の視線に
ん？って顔をする
見惚れてた自分に恥ずかしくなって
慌てておにぎりを口に入れると
お茶で流し込む
そんな私を見ながら
ふふ、って笑うと
ほわっと煙が吐き出される
「お話が終わったら連絡ちょーだい？」
「はい、」
「じゃ、ワタシはこれでおいとましますかね。」
えっ・・・
帰っちゃうの？
灰皿に煙草をギュッと押し付けてるのを
残念な気持ちで見つめてたら
お茶をこくんとひと口飲んで
よっこらしょ、って掛け声と共にゆらりと立ち上がる
んっ、て伸びをした手を
そのまま横に広げて言った、
「どうぞ？」
ん？
言ってる事が分からなくって
その光景を黙って見上げてたら
「おいで？」
優しく掠れた声に誘われるように
途端に耳まで赤くなったのが自分でも分かって
身体が固まる
そんな私を
くすくす笑って
私の前にしゃがみ込むと
俯いてる私を覗き込んで
「意外と照れ屋さん。」て、ふはっ、て吹き出して
あっ、と言う間に腕の中に閉じ込められた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：617 | 作成日時：2016年5月23日 21時
