184 色んな想い ページ36
あっ！
「ちょっ、と、！？」
おれ、だいぶ盲目になってるみたい・・・
店の前を通る彼女を見かけて
身体が反射的に動いた
暫く振りに見かけた彼女に
山田の声なんて
おれの耳に届くはずなんて無くって
なり振り構わずに飛び出してしまってた
「あっ、はるくん。お疲れ様。」
飛び出してきたおれに少し驚きながらも
いつもの様に声を掛けてくれる
「あ、お疲れ様、で、す。」
反射的に飛び出しただけだから
何の用意もしてなくって
思わず余所余所しい返事になる
ふふ
「どうしたの？」
「えっ？」
「なんか、慌てて飛び出してきたから、」
「あ、いや、」
しどろもどろなおれに
？マークの顔をしたさあやは
ふふふ
「バイト頑張ってね？じゃあ、ね。」
そう言って
手を振って背中を向ける
あ・・・
行っちゃう・・・
そう思ったら
「ねぇ、」
思わず呼び止めた
そんなはず無い事なんて分かってるけど
振り向いた彼女に聞いてみる
「また、旅行？」
「えっ？」
自分の持ってるキャリーケースに
少しだけ視線をやると
「あ、あぁ。そうだ、ね。
今度はお土産買ってくるね？」
って笑って手を振って、また、背を向ける
あぁ、おれは
いつになったら、あの背中に追いつけるのかな？
追いつける日なんて来るのかな？
・
あいつはバカだ。
想いは伝えなきゃ伝わらないんだよ？
想ってるだけじゃ、伝わらないんだ
思わず握りしめる拳
力無く、
ほんとに、あからさまに力無く
店に戻ってきた
「あんた、さぁ、」
口を開いたあたしに
「ごめん、今日は勘弁して？」
そう言うと
リボンで、プレゼント様に
ケーキの箱に付けるリボンを作りだした
はるの手から器用に出来ていくリボン
ほんとに器用だな、なんて眺めてた
あたしなんて、何回作っても
未だに完璧なものなんて作れなくって
お前は不器用だな
なんて笑われるんだ
それに
時々
上手く結べなくってテキトーに結んでる髪の毛を
「お前、一応女の子なんだから、ちゃんとしたら？」
って言いながら
器用に結んでくれた事もあった
なんで、そんなに器用なの？
って聞いたら
ん？おれ、器用貧乏なの(笑)
って笑ってたっけ
なによ、器用貧乏って・・・
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作者名：617 | 作成日時：2015年10月31日 21時
