151 視線 ページ3
「見てる」
そう言った、かずに背中を押されて
キッチンへと入ったのはいいんだけど
「エプロンは？」
「しませんけど？」
「え？しないの？」
「うん、しない。」
「なんで？」
「なんで？」
「うん、なんで？」
「だって、そんなに汚れないし、」
「そうなんだ、」
エプロンをしない、って言っただけで
意気消沈しちゃった、かず
そんな彼を横目に
手を洗って玉ねぎを刻み始めた
ハンバーグを焼きながら
人参のグラッセとマッシュポテトを作った
スマホ片手に冷蔵庫に凭れて鼻歌を歌ってるから
「座ってたら？」
「ん？じゃま？」
「ううん、邪魔じゃないけど退屈でしょ？」
「う〜ん、そうね、」
何かを考えながら
スマホをパンツの後ろのポッケに突っ込むと
サラダを盛り付けてる私の背後に回って
腰に手を回した
「こうしてたら、退屈じゃない。」
って耳元で笑うから
擽ったくて首を竦めると
「ほらほら、ちゃんとサラダの盛り付けして？」
なんて
私の肩に顎を乗っけて楽しそうに笑ってる
「・・・あの？」
「ん？」
「ものすご〜く、やりづらいんですけど？」
「そう？」
「そう。」
「じゃあ・・・仕方ない、ね。」
って腰に絡めた腕が解かれたから
ほっ、と息を吐いたら
レタスを持ったままの手を掴まれて
身体を反転させられて、かずと向き合う
向き合った私の腰を抱き寄せ直すから
「もぉ、ぜんぜ、・・・」
全然、料理が進まない、って文句を言おうとした時
潤んで欲に濡れた琥珀と視線が絡まって
思わず言葉を飲み込んだ
・
彼女の野菜を盛り付けてる手を掴んで
こっちを向かせると
視線が絡まった時
なぜだか急に
さあやと一緒に並んで歩いてた高校生の顔が頭に浮かんで
ヤキモチ、っていうの？
いてもたってもいられない
なんだかもやもや、いらいらしたものが込み上げてきて、思わず深く口付けた
驚いた顔をして
目も閉じてない彼女と唇を重ねたまま
視線を合わせると
唇を食んで
水音を立てて柔らかい舌を絡め取る
どんどん艶を含んだオンナのカオになってくから
なんだか
あの高校生に勝った気になって熱が高まっていく
オトコなんてどうしようもない生き物だな、
なんて考えてたら
「な、に、笑ってる、の？」
そう言われて
自分が笑ってたことにびっくりするけど
「ん、いや。
Aのこと、好きだわ〜って思ってさ。」
「うそっ。」
「うそ？うそじゃないでしょ。」
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作者名：617 | 作成日時：2015年10月31日 21時
