161 林檎 ページ13
昼前
心地いい目覚めで
伸びをしてベッドからおりた
彼女のスーツケースが
寝室の隅っこにきちんと置かれてるのを見ながら
リビングへと行くと
ソファーに座ってタバコに火を点ける
ふ〜、っと煙を吐き出して
水でも飲もうかと立ち上がって
冷蔵庫を開けると
そこには
見慣れないモノが入ってた
うちにこんなものあったっけ?
お皿にカットされた林檎がのってる
それを持ってソファーに座り直して
スマホをタップすると
” おはよう。行ってきます。
林檎食べていいよ。”
って
メッセージが入ってた
昨日、持ってきてたのかな?
しゃり、林檎を齧ったら
なんだか
心がほっこりした
なんだ、これ?
自分の感情に思考が追いつかない
そろそろ出掛ける準備しなきゃ、って
洗面所に行くけど
そこには
オレの歯ブラシしかなくって
へっ?さあやのは?
きょろきょろと見回してみるけど
彼女のモノは
ひとつも置かれてなくって
あのひと、
律儀に全部スーツケースにしまってあんの?
こりゃ、
なかなか手強いわ(苦笑)
・
仕事が終わって
かずんちに帰る
帰る、だけの事がなんだか気恥ずかしい
帰ったって、かずがいる訳じゃないけど
部屋の前でひと呼吸して
エビフライを取り出す
ホントに
毎日此処に帰ってきていいのかな?
リビングのソファーに深く沈んで
バッグから取り出す名刺
・・・連絡、とか
しといた方がいいのかな?
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作者名:617 | 作成日時:2015年10月31日 21時