【3章】今ある未来 ページ24
side貴方
あの日の泣き叫ぶ子供達と
私と変わらないくらいの歳の少年少女達が殺されていく姿を忘れることなんてできない
ユリウス「なんて言ったらいいのか…
気づいてあげられなくてすまなった」
私が気にしてないように笑いながら話したのが堪えたのか、魔法帝の顔色は重い
あの日の景色も惨状も、声も感触も全て覚えている
だけど私は、それを全て受け入れた上でここにいる
貴「誰がなんと言おうと魔法帝が謝る必要性はありませんよ
忘れることは一生できない出来事です
思い出す度に腹わたが煮えたぎるくらいの怒りや
誰も助けることができない絶望感に襲われることもあります」
あの日の惨状が終わった後を魔法帝は見たのだろうか
それとも、報告で聞かされたのだろうか
貴(どちらでもなかったとしても、その顔は貴方がしていい顔じゃないですよ)
悲痛で歪む魔法帝の顔に失礼ながら笑ってしまいそうになるが、堂々と笑うことにした
貴「…だから諦めました
あの日の景色も惨状も、泣き叫ぶ声も殺された子の感触も忘れようとするのを諦めました
だって無駄ですもん
忘れようとしたってあの出来事がなくなる訳じゃない
だから受け入れることにしたんです」
魔法帝はその目を大きく見開く
その驚きは私の笑顔にか、それとも言葉にか
貴「私が今見てる景色は
殺された子たちが見るはずだった景色だ
私が今感じている温もりは
殺された子たちが感じるはずだった温もりだ
今の私は
あの日殺された子たちの未来だ
私はこれからもそうやって生きていく
あの子たちが見れるはずだった未来を
精一杯生きていくって決めたから
だから謝らないでください」
私は"ユリウスさん"の手を握り、出来る限り優しく微笑んだ
あんな惨状…起こらないに越したことはない
だけど、もう起こってしまったのだ
起こった事を今悔やんでも、悲しんでも死んだ子たちは帰ってこない
なら、生き残ってしまった私くらいは全てを受け入れてこの世界を見せてあげよう
悲しまない
同情もしない
だけど、貴方達みたいな人がいたら命をかけて助ける
貴「もう決めた事だから
だから、今更謝罪とかされても困るんですよね魔法帝」
魔法帝の手から手を離し、今度は挑発するような笑いかけた
そんな私を見て魔法帝も何も言わずに
ユリウス「ありがとう」
とそう言った
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作者名：ソラ | 作成日時：2020年5月11日 13時
