国家の呪いに惑わされ。 ページ4
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「何を迷う貞治。大日本帝国の民にとって、国に貢献できることほど光栄なことはないだろう。」
「……だが、蓮二……それは、俺に大学をやめろと……」
「お前ほどならば大学に通わなくとも、力を発揮できるだろう。……お前の力があれば、この国を更に強くすることが出来る。他の国を脅威に晒すことが出来る。さあ……貞治。」
開いた蓮二の目は、どこもみていなかった。
声も姿も何もかも、蓮二であるはずなのにどうしてか、蓮二だとは思えない。
それは、きっと。
「……やめてくれ、蓮二。俺は、お前やAとの約束のために……」
「約束?……何か、お前たちに約束をしたか?」
その言葉に、耳を疑った。それは、貞治も同じみたいで。
忘れているのか、ただのふりなのか。それはわからない。でも、あの頃の蓮二は多分、どこにもいない。
今、私の目の前にいる蓮二は。
「ともかく。」
蓮二が再びにこりと笑う。あの頃のような温かみなど微塵も感じない、そんな笑みを見せて。
「俺は、お前がはいということを期待しているからな。」
「……」
「ではまた。」
蓮二はそう言って静かに去っていった。
彼は、きっと、呪われてしまったのだろう。
国家という、目には見えない呪いに絡め取られて……
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年12月23日 2時