#009 ページ9
、
――――――ドサッ。
少し大きめな音を立てて、鞄を床に落とす。
否、手の中から落ちてしまった。
駆けつけてきた響香ちゃんは
慌てた様子で「何かあったの？」と問うた。
「きょうかちゃ、私、変、で、」
「………とりあえず移動しよ」
今はお昼休みの時間だから抜けても平気、と
響香ちゃんは私の頭を優しく撫でた。
うん、と頷いて事務所を出ると
近くの自動販売機で、
響香ちゃんが飲み物を買ってくれた。
ありがと、とお礼を言って
ペットボトルに入ったお茶を受け取る。
「で？どうしたの？」
近くの公園のベンチ。
私の隣に腰掛けた響香ちゃんは
落ち着いた声色でそう聞いた。
「おかしな、ゆめをみたの」
「ゆめ？どんな？」
「分からない。思い出せない。
のに、でも、夢を見てから緑谷くんが怖い」
今までなんともなかった。
平気だった。
でもあの夢を見てから、
緑谷くんに恐怖を覚えた。
前と同じように。
「………やっぱり、暫く距離を置くべきじゃ」
「でも、私、緑谷くんが好きな気持ちがあるの」
「怖いのに、好きなの？」
「高校生の頃から
彼の、ヒーローを目指す希望に溢れた目が好きだった」
響香ちゃんは黙って話を聞いてくれた。
緑谷くんに閉じ込められていた頃だって
もちろんちゃんと、
早く抜け出さなきゃって思った。
こんな事をしている緑谷くんを
おかしく思った。
緑谷くんが怖かった。
けれどそれと同時に
テレビで緑谷くんを見たとき、
かっこいいと思った。
皆の事を忘れてしまった時、
それでもいいかなって思ってしまった。
緑谷くんを大嫌いには
なれなかった。
それはきっと、あの頃の
緑谷くんへの気持ちがあったからだ。
普通だったら、怖いのに、
それでも、これからもこれで、いいかなって、
不意に、おもってしまったことも、あった。
「どうしたらいいのかなあ、私―――――」
あぁ、遣る瀬ない。
、
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ユリ(プロフ) - 一気に見たのですが、読んでいてとても楽しかったです！終わり方もスッキリしていて、1番のハッピーエンドって感じで凄く良かったです！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年8月19日 18時) (
レス) id: a96c1cf246 (このIDを非表示/違反報告)
槇紅(プロフ) - 華萎さん» 全然、むしろ見てくださってありがとうございます！やっと完結いたしました！長い間応援ありがとうございました！ (2018年5月27日 19時) (レス) id: 5530baedc0 (このIDを非表示/違反報告)
華萎 - ありがとうございます (2018年5月20日 17時) (レス) id: 3c2e0d666d (このIDを非表示/違反報告)
華萎 - 更新されたんですね最近見れなくてすいませんでした楽しく見ました応援してます (2018年5月20日 17時) (レス) id: 3c2e0d666d (このIDを非表示/違反報告)
槇紅(プロフ) - めも。さん» それは良かったです…！私も今回執筆させていただいて、自分自身緑谷の良さがなんとなく分かってきました（笑）ご愛読ありがとうございました！ (2018年5月6日 13時) (レス) id: 5530baedc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：槇紅 | 作成日時：2018年2月2日 17時
