黒く黒く-3 ページ11
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『私は小さい頃、呪霊が皆にも見えてると思ってたの。でも違った。
それに気付かず他人と関わってしまったばかりに、私は家でも外でも1人で過ごすはめになったの、もっと早く察していれば良かったんだけどね。』
『でも、私はこれで良かったと思ってる。
そのおかげで、大切な人に逢えたから。』
乙骨は、相槌もせず、ただひたすらにAの話を聞いていた。
『…独りだった私に、沢山のことを教えてくれたの。
呪霊のこと、
私の術式のこと、
この世界のこと。
常識や礼儀だったり、
趣味・娯楽とかもね。
その人はなんとも思ってなかったと思う。
でもね、私にたくさんの愛をくれたの。
本当に、お父さんのような人だった。』
記憶も持たない頃に両親亡くなっちゃったから、実際のお父さんがそうか分からないけどね。なんて自傷気味に笑う君に、何も言えなかった。
僕にはまだ家族がいて、友達もいて、多分人並み幸せに暮らしていたと思う。
そんな幼い頃から1人で過ごしてきたAさんに、何も言えなかった。
『この事を里香ちゃんに話したらね、おんなじ経験をしてたって。
独りで寂しかった日々に光をくれたのは憂太だったって。言ってたよ。』
でも、そんな私たちの幸せも、突然無くなってしまう。
『…里香ちゃんは、憂太くんに逢えて幸せだって。
私ね、あの時実はリカちゃんを祓えたの。
でも里香ちゃんとおはなしして、これはあなた自身が呪いを解かなきゃ、里香ちゃんの思いが報われないって思ったの。』
乙骨は静かに涙を流した。
『私には、大切な人を目の前で失ってないから、''憂太''の気持ちが100%分かるわけじゃないと思う。でも、残された者同士、悲しみを分け合うことは出来ると思うの。』
Aはそう言って、乙骨憂太を優しく包み込んだ。
『愛ほど歪んだ呪いはない。けれど、愛ほど純粋な感情もない。』
『この
『あ…さっきの私の昔話、悟さんにも言ってないからふたりの秘密ね?』
綺麗な瞳………
この日、月明かりに照らされたAの少し寂しげな笑顔が忘れられず、乙骨憂太は上手く眠りに付けなかった。
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てん(プロフ) - すけさん» コメントありがとうございます!!とても素敵な感想を頂いて思わずスクショしてしまいました…今後も期待に応えられるよう頑張りますので引き続き読んでいただけたら幸いです!! (12月22日 14時) (レス) id: aa0c81460a (このIDを非表示/違反報告)
すけ - 初めまして!普段コメントしないのですが主様の描くストーリがあまりにも素敵すぎて…というか文才能力が天才すぎるというか、毎話楽しませて頂いております!そしてイラストも凄く好みでお上手ですのでこれからも楽しみにしてます! (12月21日 22時) (レス) id: 6140921743 (このIDを非表示/違反報告)
てん(プロフ) - 星雀さん» ありがとうございます(><)本当に自信が無いので褒めて頂いて嬉しいです…もっと練習します💪🏻 (11月14日 23時) (レス) id: aa0c81460a (このIDを非表示/違反報告)
星雀(プロフ) - 絵めっちゃ上手ですよー!自信持ってください! (11月7日 21時) (レス) @page47 id: cb3ce32ba5 (このIDを非表示/違反報告)
てん(プロフ) - らびおりさん» わー!!コメントありがとうございます🤍他の誰でもない呪言師の棘くんだからこそ、よりもどかしさを感じていただけたと思います…徐々に恋愛要素も入れこみますので今後もドキドキしてもらえたら嬉しいです! (10月28日 3時) (レス) @page18 id: 921adc206a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てん | 作成日時:2023年10月19日 4時