前日譚 ページ3
待ちに待った合格発表。
家に届いた通知を家族4人で取り囲む。
まだ小学校3年生の弟にも重大差はわかるようで、私の手にした封筒を緊張した面持ちで眺める。
『…開けるよ』
覚悟を決めて私は言う。紙を取り出す音が静かなリビングに響き渡る。その紙には＿
『合格…！？』
「ほんとに！？」
「Aお姉ちゃん、合格したの？」
「本当だ！」
東京の私立高校の合格がもらえた…！？半ば諦めていたのに…！？
「すごいじゃないか…！！」
お父さんもお母さんも半泣き。ちょっと軽くカオスな気もする…。そんな中、違った理由で半泣きの弟が、私の袖を引っ張る。
「ねぇ…お姉ちゃん、東京に行くの…？会えなくなるの…？」
『え…』
会えなく…そうか。私が高校に通うには、東京で暮らさなきゃいけないのか。そういえば、それはどうなるんだろう…？
お母さんは当然弟と地元に残るだろう。お父さんも職業が警察官だ。簡単に東京になんていけない。
「そうだな。そのことだが、Aの面倒は親戚に頼んである。たまに、こっちに帰ってくる約束もしているぞ。」
まだ少し半泣きなお父さんが言う。お父さんが信頼してる親戚ってどんな人なんだろ…？オタクに理解がある人だといいけど。
『大丈夫。毎日メッセージ、お母さんに送るから、話そうね。』
にこっと笑って弟を見る。つられて弟も笑った。
…かわいいｯｯ…。
「明日、来てもらう予定だから、人見知り直しておけよ。」
からかってくる余裕を取り戻したお父さんが言う。私も負けじと返す。
『大丈夫、推しじゃない限りそんなにテンパらないから。』
家族4人に温かい空気が流れる。そんな時間ももうすぐなくなると思うと寂しいが、自分の決めたことだから、ちゃんとしないとね。
＿＿推しと出会うまで、あと半日の出来事。
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作者名：天神 月花 | 作成日時：2022年12月20日 20時
