83.手 ページ34
財前side
肝試しの順が回ってきたのを確認するや否や、秋月さんはそれからずっと、ガタガタと震えながら、俺の背にしがみ付いている。
財「そんなんしてたら、前見えないッスよ」
貴「いいの。今限定で目が見えなくなって、耳が聞こえなくなって、触覚も失ってたい」
財「なら、幸村さんに頼めば……」
貴「五感奪ってもらえるって?残念だけど、断られたよ」
本当に頼んだのか、この人。
本気で言ってるのかそうでないのかよく分からないけど……。
しかし、緊張が一周したのか、秋月さんのテンションが急に下がって逆に怖い。
財「秋月さんにも苦手なものとかあるんスね。アンタなら大抵のことは受け流せそうやけど」
貴「え……受け流せそう?私が?」
財「ちゃいますか?」
貴「全然。そう見えてたなら、それはきっと私の強がりだよ。本当は、人に嫌われるのも怖いし、意識失うのも怖いし、これからのことも怖い」
財「これからのこと?」
貴「っと。口が滑った。忘れて」
ふう、と息を吐いた秋月さんは、ガサガサと木の葉が擦れる音に一層身を縮こまらせる。
普通に話しているけど、怖いことは怖いらしい。
__どうしたものか。
貴方side
財「あの」
貴「……ん?」
財「先輩、ちょおこっち来てください」
恐る恐る顔を上げ見ると、財前君は自分の隣を指していた。
貴「……つまり自分で歩けと」
財「真面目な話は、ちゃんと相手が見えるとこでしたほうがええやないですか」
貴「真面目な……話?」
財「ええから」
貴「……わ、分かったよ」
私は財前君の背中から手を放し、代わりに財前君の手に自分の手を絡ませる。
財「!!」
貴「……何?」
財「いや、手、繋ぐとは思ってなかったんで。しかも恋人繋ぎ……」
貴「誰かと……誰かと一緒にいるって感覚ないと怖い、から。……ダメ?」
財「別に、全然、ダメってわけじゃないッスけど」
貴「う、うん。よかった」
うわあ……周り、こんな暗かったっけ。
正直、財前君がいなかったら、冗談でなく気絶してたかも。
財「Aさん……て」
唐突に、財前君が呟く。
しかも、名前呼び。
貴「うん?」
財「なんか、中学生には背負いきれないような、えっらく重いことで悩んでません?」
貴「……何で」
分かるの、と言いかけて、思わず口を噤む。
貴「何で、そう思うの」
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美沙希(プロフ) - ノエルさん» 3、4話書いたらパスワードは解除する予定です。それまでどうか待っててください。長文失礼しました。 (2015年8月3日 21時) (レス) id: 7832578248 (このIDを非表示/違反報告)
美沙希(プロフ) - ノエルさん» 初めまして、コメントありがとうございます。財前君の小説についてですが、私のミスでもう一度書くことになりまして、大まかな設定は変わりませんが、行動や話の展開などは変わるかもしれないです。一度読んでくださったノエルさんには申し訳ない限りです。 (2015年8月3日 21時) (レス) id: 7832578248 (このIDを非表示/違反報告)
ノエル(プロフ) - はじめまして!いつも楽しみに見させてもらってます♪特に赤司様の作品がお気に入りです!!これからも頑張ってください!あと、財前君の作品のパスワードを教えてください!! (2015年7月29日 21時) (レス) id: 00d2d4474f (このIDを非表示/違反報告)
美沙希(プロフ) - 苺さん» そうですね、ここは感想を書く場ですし。私も作品の感想を言ってもらえるのが一番嬉しいです。これからも応援、宜しくお願いします。 (2015年5月2日 22時) (レス) id: 8fd5e0cc9a (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - 美沙希さん» 私は見習われるほどではありませんよ(苦笑)コメントはこれで終わりにします(´・∀・`)チャットに思われたらお互い大変ですので;;;;コメは時々します!!コメを私がしてなくても更新を楽しみに見ていますので(苦笑)美沙希さん、頑張ってください(^^) (2015年5月2日 22時) (レス) id: b02872e17a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美沙希 | 作成日時:2014年10月27日 22時