【テニプリ】トリップした私には『使命』がありました。２【立海】

８２．緊張 ページ33

貴「この籤、跡部さんが作ったんですか？」

手作り感たっぷりの、定番な籤。

まさかとは思うけど、箱を自ら持って籤を皆に引かせてたのは跡部さんなんだよね。

跡「ああ。肝試しはこういう風に作るもんだって聞いたからな。アイツ等の言った通りに、紙を切って作ったぜ」


どうしようこれ、笑っていいのかな。

いや、素で言っているという可能性もあるし……。


日「素ですよ、あれ」

貴「へ？」

日「本気で言ってますから。跡部さんのアレは通常運転です」

貴「……ごめん。そっちの方が面白いんだけど」

ふふっと、思わず笑みを溢すと、日吉さんは何だかホッとしたように笑う。


日「もっとガチガチに緊張してると思ってましたが、そうでもないようでよかったです」

貴「緊張って？」

日「それは勿論、これから行われる肝試しのことに決まってるじゃないですか」

貴「や、やだなあ」


私はできる限り自然に、軽く笑う。

貴「幽霊とかお化けとか……そ、そんな非科学的なもの、わわ私、信じてないし」

日「全く笑えてませんけど、大丈夫ですか？」

貴「……あ、あはは」

日「その笑えていない笑いをやめてください。狂気の笑いみたいになってますよ」

貴「……日吉君は、お化けとか平気なの？」

日「はい。というか寧ろ好きですね」

貴「へえ。世の中には変わった人もいるもんだね」

日「オカルトが好きというだけで変わった人にしないでください。大体、この合宿に来てる人って、大抵変じゃないですか」


大抵？


そんなことはない、と私が反論を唱えようとしたとき＿＿

財「秋月さん、そろそろッスけど」


そう後ろから掛かった声に、私は先程までの会話を全て忘れた。


貴「あ、ああ。そう。＿＿仕方ないね」

財「や、只の肝試しですし、んな死にに行くような顔せんといてください」

貴「そんな顔してないし」

財「現在進行形でしてますから」

貴「っ……怖いものは怖いんだよ」

財「……じゃあえっと……なんやろ。手でも繋いだります？」


嗚呼、成程、それを狙っていたのか。

手を繋げれば仲直りになると思ったのかな。


しかし。


貴「ううん。財前君、手はいいや」

私は笑って断る。


財「『手は』？」

怪訝そうな顔をする財前君。


貴「うん。……あのさ、財前君」

私はそれこそ、財前君より先にずっと狙っていたことを、申し訳ないと思いながらも口にする。





貴「背中、貸して」

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