143話 いざ出陣！ ページ7
奏「ははっ！ ……ああ、でもさあ」
貴「うん？」
ひとしきりお互いをいじめた後、２人で仰向けになりながら、奏恵がため息とともにおどけた口調で言う。
奏「不二先輩が人妻になっちゃったー」
貴「人妻って」
私は笑いを引きずりながら、問題の単語を繰り返した。
貴「人妻なの不二先輩かよ」
奏「だってそうじゃん」
貴「ぽい、とかじゃなくて断定かよ」
奏「A、妻って感じじゃないし」
貴「それはそう」
私が同意すると、奏恵が声を上げて笑いながら私を軽く蹴り飛ばす。
仕返しとばかりに私も足を絡ませて、またしばらくそうして遊んでいると、奏恵が急に声を上げた。
奏「そうだ！ 男テニ！」
がばっと起き上がる奏恵につられ、私もゆっくりと体を起こした。
奏「あっちはまだミーティング中じゃない？」
奏恵の質問に私は迷わず頷く。
今日の予定は桃と雑談の中で話していたし、何なら昨日、不二先輩からも聞いていた。
そもそも卒業式が終わり、HR後に挨拶に行こうと3年生の教室前まで行ったのだが、あまりの人だかりに引き返してきたのだ。
すると、奏恵がなぜかジトリと私を睨む。
貴「なんだよ」
奏「べつに、不二先輩から聞いたんかな、この後会うのかな、とか思ってないですけど」
貴「全部声に出てんだよ」
奏恵の言葉に僅かな恥ずかしさを覚えて顔を背けつつ答えると、奏恵は「へー」とか「ほー」とかワントーン高めの声で私を煽った。
奏「まあ別にいいんですけどね」
貴「なんなんだよ」
私が再度、奏恵に視線を向けると、彼女はニッと唇の端を上げて私を指さした。
奏「Aはほんと何もわかってないね！ 卒業式、男テニと言えば、毎年恒例の引退式という名のサイン会でしょうが！」
貴「いや知らねえ〜……」
あきれた感情を隠さず態度に出すと、奏恵からデコピンをお見舞いされる。
私は両手で額を抑えてまた寝転がるが、奏恵は勢いよく立ち上がり、私に向かって告げた。
奏「ほら、Aも行くよ！」
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2022年8月26日 17時
