185話 やっぱり変わらず、 ページ49
桃と英二先輩がまた調子に乗り始めて追加の酒を汲む。
菊「よーし! 今日は呑むぞー!」
桃「呑み明かしましょう!」
大「コラ! 程々にしないと……」
河「今日くらいはいいんじゃないかな」
手「油断せずに行こう」
乾杯の音頭を取り始めた英二先輩と桃を大石先輩が諌める。河村先輩が笑いながら、大石先輩の肩を叩いた。手塚先輩は相変わらずのしかめっ面だが、心做しか口元が綻んでいる気がする。
越「九重先輩、意外とこういう話苦手っすよね」
人には散々酒を入れるくせに、自分はチビチビと酒を啄んでいた越前が、私の隣に陣取る。
貴「うるせえ。てめえにだけは言われたくねえよ」
越「不二先輩が相手だと大変でしょうけど、頑張って」
貴「うるせえお前も頑張れ」
他人事のように話す越前に含みを持たせて返答すると、僅かに動きが止まる。
そして私から顔を逸らすと、近くにいた不二先輩の背中をつついた。
越「……九重先輩が不二先輩と結婚してもいいそうです」
振り返りざまの不二先輩にカマす越前。
河村寿司が歓声と怒号で揺れた。
貴「てめえまじでいい加減にしろよ」
越前に首四の字固めを決めて制裁を加えていると、桃と英二先輩からブーイングの嵐。大石先輩と河村先輩が「まあまあ」と私を諌めるので、ギブアップを宣言していた越前の拘束を解く。
そんな私たちの近くで、堪えるような笑い声。視線を向けなくても誰かはわかった。
先輩は私を助けようとはせず、終始楽しそうにやり取りを見つめていた。
先輩の楽しいポイントは少しズレていて、たまに噛み合わないことがある。普段は変なの、と思うだけで済むが、こういう時の先輩の態度は、如何なものかと思ったり。
私が桃たちの言葉を受け流していると、次第に話題は『結婚』に置き換わっていく。
考えてみれば、私たちももう24・5歳で、周りに結婚して、子どもがいる友人もいる。
「時が経つのは早いよな」「結婚も考える歳か」なんて会話を交わしつつ、私は根に持って不二先輩とは目を合わせない。
先輩は私に嫌われるかも、と思うことは無いのだろうか。その意地悪なところを直さないと、結婚なんてしないぞ。
そんな私の思考を見透かしたように、不二先輩は微笑みながら真面目な口調で言った。
不「とりあえずAは、ちゃんと貯金するところから始めようね」
貴「はい……」
その言葉に、思わず返事をしてしまう。
こんなところで現実的に私を諭す先輩が、私はやっぱり好きなのだ。
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2022年8月26日 17時