【テニスの王子様】遠回しな君の隣５【不二周助】完結 (ページ39)

今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:10,718 hit

175話　不二周助の欲心6 ページ39

確かにその通りだと、肯定の意を込めて微笑む。裕太の唇が尖り、憂うようにチラチラと僕を覗き込んだ。

裕太の言うことは最もだと思う。海堂と桃、Aと江本さん、大石と英二、繋がりは様々だけど、みんな正面切ってぶつかり合っている。
それを全面的に肯定はしないし、全てではないけれど、みんなを見ていると、そういう関係性も大切なのだろうと思う。

Aはどうだろうか。僕とのこの関係を、どんな風に感じているのだろう。いつだって本気で怒って笑って、気持ちを伝えてくれるAの本心は……。

Aに触れたからと言って、全てがわかる訳では無い。でも触れないことで不安が募るのなら、この気持ちを伝えてみてもいいのだろうか。

ーーーーけれど、もし触れて幻滅されたら？それによってAの気持ちが離れてしまったら？

思わず目を瞑って暗い視界をさ迷っていると、不意に自分の近くに気配を感じた。目を開くと、視界いっぱいの裕太を捉える。

何も言わない僕を見て、裕太の表情に不安が現れていた。考えてみれば、裕太とこんな話をしたのは初めてだ。

僕は笑みを崩さず、恐る恐る口を開いた。

不「……裕太はさ、好きな人に触りたいって思ったこと、あるかい？」

裕「……はっ？！」

問いかけに数秒置いて、顔を真っ赤にして裕太が僕を見る。声が見事にひっくり返っていて、僕の表情も崩れた。

不「かわいいなあ」

口をついて出た言葉に、裕太の目が釣り上がる。

裕「帰る！」

鼻息を荒くして、裕太がソファから勢いよく立ち上がった。込み上げる笑いを堪えて、僕は裕太を手のひらで制した。

不「ごめん、待って。本気で聞いてるんだよ」

まだ微かに笑いを堪えきれなかったが、裕太は僕の目を真っ直ぐ見つめると、拗ねたようにそっぽを向きながら、それでもソファへと座り直す。