【テニスの王子様】遠回しな君の隣５【不二周助】完結 (ページ35)

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171話　不二周助の欲心2 ページ35

通話が切れてしまったかと耳から離したとき、佐伯の躊躇いがちな声が聞こえた。

佐『何かあったのか？』

相変わらず、人の機微に敏感というか、気を遣うというか。まるで向かい合って佐伯と話している気分になる。
僕はゆるゆると首を振ってから、肯定とも否定とも取れない返答をする。

不「うーん……」

佐『……まあ、お前たちなら大丈夫だと思うけど、もし何か話したいことあったら、いつでも相談してよ』

僕の心情を察してか、佐伯は追求することなく優しい声でそう言った。
僕はそれに甘えて頷き、「また来週」と言って、お互い通話を終わらせる。

息をついてベッドに寝転がると、不意に天井が揺らぎ、跡部の挑発的な顔が浮かんだ。

Aと跡部のことがあったのが一昨日。

あの後、Aに追いついてからすぐに話をしたかったが、Aは大会中で部員に捕まり、そのまま表彰式からの打ち上げへ。夏休み中ということもあり、次の日……つまり今日、Aは部活休みで、僕は練習試合に他校へ行ってしまい、日が落ちてから学校へ戻り帰宅した。
結局、会う時間が取れずに間が空いてしまっている。

お互いに直接話をしたいと思ってはいて、明日はAは部活、僕は練習試合後で休みなので、Aの部活終わりに合わせて会うことになっている。

不「……ふぅ」

跡部には、『焦る必要はない』と言っておきながら、一昨日から頻繁に、無意識に出るため息。

今まで、からかいの範疇で僕からAに少し触れることはあっても、それ以上の接触はなかった。触れたいと思ったことは、幾度もある。それでも、Aとの毎日は、それこそ満たされるほど楽しくて、焦る必要はない、そう思っていたのは本当だった。

跡部がAに惹かれているのは知っていた。跡部だけじゃない。Aがどれだけ『友達』という関係になりやすいからと言っても、全員がそうじゃない。

分かっていても穏やかでいられたのは、Aの気持ちに、一欠片の疑いも持っていなかったから。Aは遠慮もするし気も遣うけど、確信のある物事だけはハッキリ伝えてくれるから、Aが僕に変わらない態度で、言葉で想いを伝えて、笑って「また明日」と言ってくれているのなら、いつだって、大丈夫だと、そう思っていた。