156話 気づかず思いは溢れてる ページ20
貴「で、結局なんだっけ」
そして改めて裕太を見ると、呆れた顔で頬杖をついたところだった。
裕「はあ……付き合うってのが、なんで予想出来たかって話だろ」
裕太の答えに、私は思わず手を叩いた。正直流れで会話しすぎて、全く思い出せていなかった。
貴「そうだそれだ」
「不二先輩が私の話題を出すから」という理由に、私は反論したのだ。
不二先輩は物静かではあるが、無口という程では無い。自分から会話を振ることも多いし、私はむしろ、いつもそれに助けられている部分もある。
裕太が言うには、不二先輩との話の内容ではなく、話題に上がる、ということが重要らしい。
私の中で、「不二先輩から上がる話題=付き合う」の方程式が、いまいち不二先輩に当てはまらなかった。
そんなことをしたらほとんどの人間が不二先輩とお付き合いしていることになってしまう。それはそれで面白いが。
私が数分前を思い出したことで、ようやく会話を繋げることが出来る。
貴「そこからの説明を諦めるなってとこよ。裕太狂いにキレないでさ。いつものことじゃん、不二先輩にとっては」
また恥ずかしがるか、それとも怒るか。裕太の反応を予測していたが、裕太から返ってきたのは、思わぬ答えだった。
裕「だから、そういうことじゃないけど、そういうことなんだよ」
なぜか僅かに、言葉の端に憐れみが含まれていた気がする。何より「そう」の指しているところが分からず、私はつい口調を荒くする。
貴「おい日本語話せよ」
裕「話してるだろ！ 言葉にすんの苦手なんだよ！」
貴「それは知ってる」
私の言葉に、裕太が「だからー」と言葉を続けようとするが、なかなか要領を得ない。
そのうち裕太は、やっぱり私への伝達を諦めて、残りの烏龍茶を吸い上げた。
帰り際、不二先輩に『今度2人のスイーツ会に混ぜてよ』と言われていたのを思い出し、裕太に提案してみたが、語尾に食い込ませての拒否が返ってきた。
不二先輩に1番のお土産は持ち帰れなさそうだ。写真と動画で我慢してもらおう。
そして、裕太と久々のスイーツ会を解散してから、家に帰って裕太との会話を反芻して、ようやくその意味に気がついた。
しかし、その内容は小っ恥ずかしいさもありながら、それでもやはりこう言わざるを得ない。
貴「やっぱり裕太には負けるよ……」
今カノとしては、『今のところ』を付けるべきかもしれないが。
ベッドに転がりながら、私は心からの言葉を漏らした。
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2022年8月26日 17時
