【テニスの王子様】遠回しな君の隣５【不二周助】完結 (ページ41)

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177話　不二周助の欲心8 ページ41

自然と足は氷帝学園に向かっていた。まだ時刻は1時を過ぎたあたりで、Aは練習中だろうが、それでも動かずにはいられなかった。弓道場の場所すら分からないが、行けば何とかなるだろう。

まさか自分がこんな突飛な行動ができる人間とは知らなかった。

Aといると、知らない自分に出会える。それを怖いと思わない。きっとAなら、笑ってくれるって知っているから。

何度か訪れたことのある、氷帝学園高等部の正門。相変わらず学校とは思えないほどの門構えと広さだ。

夏休みに登校する制服の生徒に紛れて正門を抜ける。

テニスコートへの行き方なら知っているが、その他となると土地勘がない。どこかに案内があるはずだと、警備などに見つからないよう、とりあえず校舎に向かって歩いていると、不意に聞き慣れた声が聞こえた気がした。

校舎の至る所から聞こえる雑音から、それだけが鮮明だった。

ロータリーを超えた木陰と校舎の間。日陰になっていていくらか風の通る涼しい場所から、その声は聞こえた。

「……わかってるだろ」

聞いた事のない、跡部の縋るように責める口調。

「いや、まあ、……それは」

続いたのは、戸惑いを隠さないAの声だった。

驚いて立ち止まってしまい、出るタイミングを失う。立ち聞きのようで申し訳なかったが、Aの本心が聞けるかもしれないという気持ちも相まって、その場に留まることにした。

跡「なら遠慮はしねえ」

貴「いやそこはしてくださいよ。私彼氏持ちですよ」

跡「現実つきつけようったって関係ねえよ」

詳細は分からないが、跡部がAにアプローチをかけていることは明白だった。そしてAも、跡部の気持ちをしっかりわかった上で、ハッキリ断っている。