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107話 寄せ植え ページ10

レジに行くと、先輩が財布を取り出しているところだった。私は隠れるように、先輩の2つ隣のレジに小さめの鉢植えを置いた。

先輩に視線を向けると、店員さんがトレイからお金を数えているところで、私も慌ててお札を渡す。買っているところを見られるのが嫌で、細かいお金は出さなかった。

店員さんのありがとうございましたの声を背中に、ちょうど会計が終わった不二先輩と合流する。
先輩は私の持つ袋に視線を向けたが、閉店の音楽が流れる店内を気にして、足早に外に出た。


外はもう完全に日が落ちていて、夕方とは比べ物にならない冷気が体を覆っているはずなのに、妙に頬があつい。

視線を向けた不二先輩が、口を開きかける。私はそれを遮って、声を張った。思ったよりも大きな声に自分でびっくりしてしまったが、顔を向けた不二先輩は穏やかで、先程よりも落ち着いた口調で、「どうしたの」と問いかける。

さりげなく、を意識して言葉を選んだはずだった。


貴「いつもお世話になっております」

もっと軽く渡そうとしたはずだったのに。意に反して丁寧すぎる言葉と共に突きつけたのは、小さな鉢植えが入った袋。

不二先輩が僅かに目を張る。珍しい表情に呆然と見つめると、すぐに不二先輩の手が私の持つ袋に伸びた。私の視界が揺れているのか、不二先輩の指が震えているのか、何故か不二先輩の動作はゆっくりで、袋を指にかけると、両手で取っ手を持って、中を覗いた。

不「……パンジー?」

貴「ビオラとパンジーって書いてありました。私は違い分からないんですけど、色が、なんか、男テニみたいだったから」

先輩のイメージは、繊細で儚くて透明。物思いに耽ったり、本を読んだり、ひとりが絵になる人。でも、私が1番先輩らしいと思うのは、テニス部のみんなといる先輩だった。
カラフルな色の鉢植えは、テニス部みたいで思わず手が伸びた。

先輩が一瞬だけ考える素振りを見せる。鉢植えにもう1度視線を移して、直後、大きく息を吐いて顔を隠した。

貴「……先輩?」

不「うん、平気。……嬉しいだけ」

先輩の声がかすかに震える。祈るように、ビニール袋を持った両手を額に付ける先輩の足が、1歩こちらに近づく。

不「嬉しい。ありがとう」

顔を上げた先輩は、晴れやかに破顔していて、でも何故か顔を逸らす気にはならなかった。

貴「私も嬉しいです」

意図せず零れた言葉に口を閉じかけるが、それを聞いた先輩の、あまりにも稀有な綻びに、私は小さく肩を揺らした。

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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます!ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _) (2020年9月7日 20時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます!仕事お疲れ様です!1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ;∀;)更新遅いですがよろしくお願いします! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/  
作成日時:2020年8月11日 1時

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