104話 付き合って欲しい ページ7
「A? 大丈夫?」
貴「あ、はい、大丈夫です」
不思議そうに眉を寄せていた不二先輩の表情が緩む。
私は改めて挨拶をして、急上昇した心拍数を戻そうと努めた。
まずは先手必勝。不二先輩が口を開きかけたので、慌てて口を挟む。
貴「な、何買いに来たんですか」
問いかけに、不二先輩が微笑む。視線が下がり、綺麗な指がインテリア雑誌を手に取った。
不「今月の新刊」
人に向けるのとは少し違う、僅かに高揚した表情に、改めて好きなんだなと思わせる。
貴「あ、やっぱり……」
不「あれ、想像ついてた?」
漏れ出た心の声が、不二先輩の耳に届いてしまった。冷静になれば「何となく」とか言って誤魔化すことが出来たが、そんなこと考えつく暇もなく、絵に描いたように慌ててしまう。
貴「ああいや、その」
追いつかない思考に意味の無い単語を呟く。先輩なら軌道修正してくれそうなのに、いつまでもニコニコとこちらを見つめる。伝える言葉が見つからず声が途切れそうになった時、不二先輩が小さく笑った。
不「Aは? 雑誌?」
やっと出た助け舟に意気揚々と乗っかった。
貴「いえ、漫画です」
堂々と言ったにもかかわらずそのブツを見せない私に、何か察したであろう先輩が「そっか」と頷きかけて、雑誌の棚に目を移す。
不「何見てたの」
そこに話を戻すか。つい苦々しく目を瞑ってしまう。薄らと開けた視界では、不二先輩が不思議そうに首を傾げていた。
貴「いえその、まあ、いろんな雑誌があるんだなって思って」
雑誌と不二先輩を交互に見ながら笑顔を作る。先輩は一瞬きょとんとして、すぐに口元に笑みを作った。
そして、1歩、距離を詰める。
不「A、良ければ、付き合ってくれないかな」
***
貴「初めて入りました」
店内に埋め尽くされた色とりどりの花を、キョロキョロと眺める。花屋にも入る機会がないのに、まさか園芸店に入る日が来るとは。
不「僕もあまり入らないな」
私より1歩後ろに立つ不二先輩の言葉に、私は思わず聞き返した。
貴「そうなんですか」
不「サボテンは多肉植物だからね。こことか花屋とかにも置いてはあるけど、僕は専門店に行くことが多いかな」
貴「ほほう。なるほど」
不「葉っぱとか茎とか、内部に水を貯められるのが多肉植物だよ。多肉植物専門のお店があるんだ」
私の知ったかぶりに、不二先輩が丁寧に説明してくれる。これがモテる秘訣か。
私は思わず振り返って先輩を拝む。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます!ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _) (2020年9月7日 20時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます!仕事お疲れ様です!1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ;∀;)更新遅いですがよろしくお願いします! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2020年8月11日 1時