103話 あと少し ページ6
部室の外に出ると、こもっていた熱が一気に四散し、体が冷気を帯びていく。私は一回り体を縮こまらせて、意を決して帰路につく。
4時半を回ればあたりはもう薄暗く、彼方に僅かな紫色が見えていた。
休日である本日の午後練は基礎のみで、1時間前に既に解散となっている。部室に残っていたのは私ひとりで、腹の虫を抑えながら街灯の下を歩く。
いつもだったら曲がる十字路を真っ直ぐ進み、数分歩くと駅前の商店街が見えてくる。今日は新刊の発売日だから、どんなに疲れていようが手に入れない訳には行かない。
この辺りでは最も大きな書店に入り、一直線にBLコーナーへ向かう。3年越しの新刊。絶対に手に入れてみせる。
ここになければ書店をハシゴする覚悟だったが、どうやら入荷していたようで、私はホクホクとした気持ちで新刊を手に取ってレジに向かう。
すると、ふと目に入った平積み。立ち止まって見ると、雑誌の新刊が置いてある棚には、ファッション誌、ビジネス誌、スポーツ誌、音楽誌など、様々なジャンルの雑誌が置かれている。
その中の植物雑誌には、パンジーの綺麗な写真が表紙で飾られていた。それを見て、他の植物も面白そうと言っていた不二先輩を思い出す。
あれから先輩と出くわすことはなく、バレンタインも一昨日に迎え、私は激辛菓子を今も4分の1部室に突っ込んでいる状態だ。噂によれば、不二先輩は今年、いつもの倍以上の告白をされたらしい。やはり最高学年。周りが焦るのも無理はないだろう。
私はと言うと、当日の朝はバレンタインということをすっかり忘れ、激辛菓子攻めでバレンタインを思い出したが、すぐにそれと周囲の誤解の処理でキャパオーバーし、お世話になっている人たちには貰ってばかりのバレンタインになってしまった。
お世話になっている、最高学年の人達。私は何もしなかった。もちろん卒業式まではまだ1ヶ月あるが、返せる時間は残り少ない。今更ではあるが、週明けにでも遅ればせながら何か渡してみようか。
例えば、不二先輩には花とか。
貴「いやいや……」
自分の考えに小さく首を振る。先輩ごとに分けていたらキリがないし、つか先輩の好みあるだろうし、花かどうかわかんないし、そもそも先輩はサボテン好きだけど写真撮ったりインテリアとか集めるのも好きだし、いやでもそんなこと言ったら何も渡せないし……。
「A」
貴「うえい！？」
思考の中に突然誰かの声が割り込む。声と顔を上げて声の方に視線を向け、思わず硬直した。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます！ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*･ω･)*_ _) (2020年9月7日 20時) (
レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます！仕事お疲れ様です！1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ；∀；)更新遅いですがよろしくお願いします！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2020年8月11日 1時
