129話 穏やかに、激しく ページ42
貴「不二先輩、ここで何してたんですか？」
私の問いかけに、不二先輩は「ああ」と、思い出したように窓際のテーブルまで移動した。
私もその後ろをついて行き、テーブル前で不二先輩の横に並んだ。
貴「あ、これ」
テーブルいっぱいに広げてあったのは、青学テニス部や他校のテニス部が写った写真だった。
不二先輩はそのうちの1枚を手に取り、少し恥ずかしそうに口を開く。
不「向こうで撮った写真を整理してたんだ」
貴「すごい。めっちゃあるじゃないですか。全部先輩が撮ったんですか？」
不「何枚か他の人が撮ったのもあるけどね」
不二先輩はそう言いながら、手に取った写真を私に手渡す。先輩が視線をテーブルに向けたので、私も同じようにテーブルを見て、たくさんの写真を見渡した。
貴「すごい……みんな楽しそうですね」
息を吐くように出た言葉に、不二先輩が静かに頷いた。
不「うん。楽しかったよ」
なかには練習中や試合中の写真もあった。
その時の会話や音までもが聞こえてきそうな写真に、私は1枚1枚手に取ってコメントをする。それに不二先輩がその時の会話や雰囲気、色々なことを教えてくれた。
練習中に高校生の代表と勝負をしたこと。
中学生代表でふざけて怒られたこと。
試合前にお互いを鼓舞したこと。
試合中にチーム内で交わされた言葉。
勝った時、負けた時、その時どんなことを思ったか。
先輩の話を聞きながら、この人は本当にテニスとテニス部が好きなんだなと、何故か私が嬉しくなって、先輩の言葉に大きく頷いた。
貴「あ、これは風景写真なんですね」
あらかたの人物写真を見終えて、ふと、テーブルの上、窓際に何枚も重ねて置かれた写真が目に入った。
不「うん。これを分けたくて」
そう言いながら、不二先輩が風景写真の束を手に取り、私との間に持ってくる。
1枚ずつゆっくりとめくりながら、先輩がオーストラリアのことを話してくれた。
貴「いいなあ……」
不意に、息を吐くように声が漏れた。隣で不二先輩が微笑む気配がして、私はゆっくりと顔を向けた。
先輩はやはり綺麗に笑っていて、私はそれに不思議と安堵して微笑み返す。
その瞬間、不二先輩の表情が一瞬かたまり、直ぐに解けた唇が、少しずつ開いた。
不「……A」
貴「はい？」
不二先輩は開きかけた唇を閉じ視線をそらして、何かを決意したようにまた私を見た。
不「好きだよ」
雨の音が、遠く、遠くに響いていた。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます！ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*･ω･)*_ _) (2020年9月7日 20時) (
レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます！仕事お疲れ様です！1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ；∀；)更新遅いですがよろしくお願いします！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2020年8月11日 1時
