【幸村精市】 ページ28
貴「まあ確かにそうかもしれないですね。偶然持ってきたってのもありますし、好きなので」
表紙に目を落とす。数々の夜空にまつわる文章と、まだ夜間の飛行が命懸けだった時代に生きる人達の人生を、シンプルな表紙から想像する。
目の前の幸村さんがふわりと笑う気配がする。その空気に紛れて顔を上げると同時に、幸村さんの問いかけが聞こえた。
幸「どうして好きなの？ 僕はまだ読んだことないけど、名作だけど暗い話だって聞くよね」
貴「うーん、なんて言うか、リヴィエールの人間くさいところですかね」
幸村さんが考えるように宙に視線を送る。
その反応を見て、私は問いかけた。
貴「人間くさくないですか？」
幸村さんは困ったように笑って首を振った。
幸「僕はまだ読んでないからわからないよ。ただ、あらすじを読んだ限り、冷たいイメージがあるな」
幸村さんの言葉に、確かにと深く相槌を打ったあと、私は言葉を選びながら口を開いた。
貴「ネタバレになっちゃうからあんまり詳しくは言えないですけど、私も最初は冷血感だな、そんなに使命？ ……仕事？ が大事かなって思ってました」
ネタバレは大丈夫だろうかとちらりと幸村さんを見ると、さっきより、どこか苦しそうな顔をしている気がした。
あまり内容の話はしない方がいいかもしれない。
私は詳細を省いて、言葉を続けた。
貴「でも結局は見方……というか、その人の立場の問題で」
私は手の中の本をパラパラめくりながら、内容を反芻した。
貴「リヴィエールのセリフに、『部下の者を愛したまえ。ただそれと彼らに知らさずに愛したまえ』ってのがあって、それ読んだ時に、この人はすごく人間味のある人なんだなって」
冷気が身体をすぎる。身震いして、指先だけで弄んでいた本を閉じた。
貴「まあ、リヴィエールは極端な思考してるなと思うし、友達にはなれなさそうですけど」
苦笑いを漏らすと、少し重い表情をしていた幸村さんが肩を揺らす。
幸「ふふっ。でも好きなんだよね」
貴「リヴィエールがってより、作品がです。読んでない人に言うのもなんですけど、内容はもちろん、結末が好きなんです」
幸「そうなんだ。より読んでみたくなったな。この入院中に読んでみるよ」
入院という言葉に、やっぱりと思ってしまったが、なるべく自然に頷いた。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます！ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*･ω･)*_ _) (2020年9月7日 20時) (
レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます！仕事お疲れ様です！1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ；∀；)更新遅いですがよろしくお願いします！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2020年8月11日 1時
