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【跡部景吾】 ページ22

「見事に外したな」

艶のある低音が降ってきた。
灰色のコンクリートからゆっくり視線をあげると、境界線のように引かれた日向に、運動靴から伸びる綺麗なふくらはぎ。ハーフパンツにパーカーのフードを被ったすらっとした高い背丈が見えた。真上から見下ろす太陽のせいで顔は影になっているが、片側の唇を僅かにあげた跡部さんが見え、私は思わずため息とともに項垂れた。

跡「弓道の試合なんて初めて見たぜ」

なかなか興味深いなと呟く跡部さんは、なんだか機嫌が良さそうで、その発言が示す意味に、私の気分はより沈んでいく。

貴「こんなとこで何してんすか」

視線を地面に向けたまま、袴の裾をパタパタと扇ぐ。湿気の多いまとわりつくような空気でも、僅かに涼しさを感じた。

跡部さんは問いかけに対して「アーン?」と、何故か高姿勢を貫いている。にもかかわらず不快に感じないのが跡部さんのアイデンティティなのだろう。

跡「偶然だ。いつも人の少ない場所だからな」

人の多さにつられてやってくるとは、この人も存外ミーハーだ。会場周辺は試合がある時以外は人通りの少ない場所だから、何かあるのかなと気になる気持ちは分からなくもない。

貴「このくそ暑い中、外出ですか」

何の気なしに質問したが、数秒たっても跡部さんからの返答はない。
足は視界にあるのにと、訝しんで顔を上げると、跡部さんの視線は私の背後の会場に向いていた。
しかし、目の奥はどこか、別のものを見ているように見えた。


貴「…………中らなかったの、久しぶりです」

跡部さんの視線をおって会場に目をやりながらつぶやく。

貴「相手の中りがみえて、その瞬間視界が揺れて、気づいたら終わってました」

託されたのに、私は裏切ってしまった。先輩は何も言わなかったけど、絶対に悔しいに決まってる。うちの先輩に責める人は居ないけど、先輩の心のどこかに燻りが残ってしまうと思うとやるせない。
いつも何となくみんなで食べるお昼も、足早に逃げ出してしまった。

地べたに座り込み、会場の外壁に背を預けながら、何故か跡部さんに後悔を吐く。こんなことを言っても仕方ないのは分かっている。跡部さんと私では、敗北の内容も意味も、何もかもが違う。

跡「……それなら、俺と同じじゃねーの」

そう考えた時に、正反対の答えが聞こえて、思わず顔を上げた。

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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます!ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _) (2020年9月7日 20時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます!仕事お疲れ様です!1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ;∀;)更新遅いですがよろしくお願いします! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/  
作成日時:2020年8月11日 1時

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