【跡部景吾】 ページ21
会場は熱気に充ち、喧騒の中にある緊張が至る所で弾けそうに揺らいでいた。
拳を握ってひらく。周りのチームメイトも、胸を叩いたり肩を上下させながら、どうにか緊張を和らげようとしていた。
この2日が、私たちにとっての夏だ。
そして、それは今日が最後。
昨日予選が行われ、青春学園中等部は、見事団体での決勝進出を決めた。16チームが決勝に進める中、私たちは5位で決勝を決めたが、目標は優勝。
昨日は優勝をめざした熱い円陣で解散したが、今朝集まったみんなの顔は不思議と静かだった。
体の中にある不必要なものを吐き出すように、長く長く息を吐く。ギリギリまで吐ききって、反動で大きく息を吸い込めば、さっきより視界が開けたような気がして、先輩2人を見つめた。同時に振り返った2人が自分を鼓舞するように頷く。入場の合図。たった1つ年上の2人の背中は、酷く大きく見えた。
私が『落ち』だと知らされた時、呆然とする私を横目に、部員たちは「よっしゃー昼飯頂き！」だの「大穴にかけたのにちくしょう」だの、首を傾げる言葉ばかりを並べていた。ちくしょう勢は私を恨めしそうに見る始末。
後でわかったことだが、2年選抜の私が立ち順でどこになるか昼飯を賭けていたらしい。憎しみ。
与えられた役割で、周りが肯定してくれるのであれば反論はない。ただこの時ばかりは、つい口をついて「なんで」と疑問を発した。
全中という大舞台。2年で団体戦メンバーに選ばれるだけでも稀で、正直いっぱいいっぱいだったのに、まさかここで最後尾なんて、もはやキャパオーバーだ。
そんな私を見て、周りの部員、特に先輩たちがにやにやしながら肩を叩く。団体戦メンバーの部長と副部長、結果的に4人目となった3年の先輩が、最後に私の肩と頭と背中を叩く。その瞬間、痛みとともに受け取ったもの。
トーナメントで勝ち上がり、最終戦にもつれ込んだ。
切込隊長の部長が1射目を見事中て、結果3中的中し、副部長が安定天才の皆中。この成績ならもはや勝ちだろと思うが、なぜか相手も接戦で私の落ちまでもつれ込んでしまったジーザス。
先輩からの流れを受け取って胴造り。いつもより会が短くなってしまい、 1射目、外れ。心臓が潰れそうになり、唇を噛むことで現実へ意識を引き戻す。
2射目中り、相手が2射目を外したのが見え、気が抜けたのか3射目が外れた。相手が中り同点で、心拍数が急激に跳ね上がる。意識がふわふわする。28メートル先の的が揺れて、矢が放たれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます！ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*･ω･)*_ _) (2020年9月7日 20時) (
レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます！仕事お疲れ様です！1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ；∀；)更新遅いですがよろしくお願いします！ (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2020年8月11日 1時
