116話 もっと先の約束 ページ19
跡「海外にも行くのか」
貴「行けるなら行きたいです!大人になったら金貯めていきます!」
コートからボールを応酬する音がする。そちらに目をやって見つけた人物を見て、そういえばと思い出した。
貴「それこそこの間、不二先輩に綺麗だからって、北欧の写真集見せてもらって、ページ半分くらいオーロラで、すげえ綺麗でした。生で見たら迫力凄そうですよね。2人でテンション上がって、大人になったら絶対行こうって」
校内で偶然会った時に、すごく綺麗だからと見せてもらった写真集には、夜景や自然、人、そして夜空いっぱいのオーロラが写っていた。
元々テレビでみてから、本物を見てみたいなと思っていたから、「大人になったら旅行行きます!」と断言したのだ。すると、不二先輩は私の様子を伺うように、少し小さな声で「僕も一緒に行ってもいいかい?」と、問いかけたのだ。
あの時は思わず頷いたが、今考えると、大人になってからの約束って、すごく、こそばゆい。
考え出すと身体中むず痒くなって、跡部さんの顔を見ると、何故か少し不機嫌そうに眉を寄せていた。想像と違う表情に首を傾げる。庶民の程度の低さに呆れたのだろうか。
貴「跡部さん見たことありそう」
跡部さんの考えていることはイマイチ分からない。彼の表情に一喜一憂していては会話は出来ないので、変わらず言葉を賭ける。
すると、跡部さんは前髪をかきあげて、いつもの堂々とした表情を取り戻す。
跡「アーン、当たり前だろうが」
貴「やっぱりな! さすがっすわ。いいなー」
何気なく発した言葉に、「そうだろう」とでも誇らしげな言葉が返ってくると思っていた。
しかし、またその想像は裏切られる。
跡部さんからの言葉が途切れる。いつもだったらテンポよくかえってくる声が途切れ、跡部さんに顔を向ける。
目が合って、いつになく真剣な跡部さんに、息を呑んだ。
跡「連れて行ってやろうか?」
声が少し張りつめる。何を言われたかわからず、数秒の間の後、聞き返した。
貴「え?」
跡「フィンランド」
国名の後、何かを言いかけて口を噤む。珍しく少し躊躇い、1度唇を結んでから開いた。
跡「一緒に」
これは、旅行に行こうと誘われたのだろうか。それだけなのに何をそんなに緊張することがあるのか。
跡部さんの考えが読めずにしばらく跡部さんを見つめてしまうが、また珍しく跡部さんの瞳が揺れ、我に返った。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます!ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _) (2020年9月7日 20時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます!仕事お疲れ様です!1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ;∀;)更新遅いですがよろしくお願いします! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2020年8月11日 1時