108話 買い物 ページ11
奏恵が陳列された洋服に手をかけながら、ああでもないこうでもないと鏡の前で唸る。合う色とか服の種類とか、基本ジャージかトレーナー、夏はTシャツくらいしか気ない私には、きっと一生縁のない話だろう。
最寄りから2駅先の小規模なショッピングモールは、日曜だからか異様に混みあっている。私たちと同じか年上の女子が、奏恵と同じように洋服を手に取って、自分に合わせたり友達にすすめたりしながら楽しんでいた。
私は悩む奏恵の隣で大きくあくびを漏らし、スマホで時刻を確認した。
貴「2時か」
昼前に集合して、既に昼飯は済ませてある。そもそもの目的が奏恵の買い物だったから、別に時間なんて気にしなくてもいいのだが……。
ちらりと奏恵に視線をやると、まるで私の言いたいことを先読みしたように、奏恵が口を開いた。
奏「ごめんなさいね、30分も時間使って」
貴「や、別にいいけど」
奏「けど、飽きちゃったんでしょ」
貴「まさにそれ」
私と返答に、奏恵が呆れたように笑いながら、ひとつ、服を手に取った。
貴「それにすんの」
問いかけると、奏恵が満足そうに頷く。そのままレジに向かうのを見届け、私は出入口付近で待機する。しばらくして奏恵が満面の笑みで近づいてきた。
奏「おまた」
貴「なあ甘いもん食いたくね」
奏「クレープがいい」
貴「じゃあ駅前だな」
即決した私達は、駅前に向かうべくショッピングモールを出る。
2月の終わり、例年にしては少し肌寒く、道を歩く人達の中にも、まだコートを着ている人がいた。
徒歩10分、駅に着く少し手前の道を路地に入ると、雑貨屋やカフェなどが並ぶ通りに、クレープの旗が見える。既に2組ほど並んでいるようで、私達も最後尾に着いた。
2人で一応メニューを見るが、頼むものは決まっている。奏恵はいちごとバナナのカスタードで、私がチョコブラウニーアイスだ。
奏「この寒い中アイスにすんの」
何も言わない私を見て、奏恵がゲンナリした様子で聞いてくる。私が間を開けず頷くと、二の腕をさすって「ないわ」と声を漏らした。
貴「アイスはいつ食べても美味くね」
奏「美味しいけど寒い」
貴「日が出てるから平気」
奏「超人め」
そうこうしているうちに順番が来て、2人で注文して、数分の待ち時間の後、商品を受け取る。
そこの通りは人通りも多く、落ち着かないということで、私たちは歩いてすぐの公園へ向かった。
そして、私はその公園に行ったことを後悔する。
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葉奈(プロフ) - はるるんさん» はるるんさんありがとうございます!ゆっくり更新ですがよろしくお願いします(*・ω・)*_ _) (2020年9月7日 20時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 葉奈さん» 葉奈さんこそお疲れ様です(*´-`)疲れを取ってから更新してくださいね(^_^) (2020年8月31日 23時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - はるるんさん» ありがとうございます!仕事お疲れ様です!1度でもいいから終わらない夏休み経験したいですね( ;∀;)更新遅いですがよろしくお願いします! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c1c4e29ce5 (このIDを非表示/違反報告)
はるるん(プロフ) - 毎回面白くて更新楽しみに待ってます(^ ^)私も仕事をしているので終わらない夏休みがあるマダオが羨ましく思います笑 (2020年8月18日 22時) (レス) id: 3a9f70176a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2020年8月11日 1時