29話 何でもないそのひとことが2 ページ30
不思議なことに、今まではち切れそうだった鼓動は、静かに、ゆっくりと大人しくなっていく。
ここが好きだ。
この緊張感が好きだ。
この匂いが好きだ。
だけど、今日はちょっと騒がしい。
静かにして。集中させて。うるさい。
浅い深呼吸を一つ。
いつものように構えると、頭の中に流れる雑音が消えた。
静かになったのか、それとも私が集中できたのか。
弓を引くと、キリキリと特有の音がした。
私の呼吸、相手の呼吸。
これが最後だ。
これが当たれば、全国へ行ける。
『――――射位に立っているときに余計なことは考えるなよ』
ああ、そうでしたね先生。すいません。完全に雑念はいってました。
体が軽くなった気がする。
その瞬間、ふっと、手元から矢が放たれた。
ざわっ。耳元に音が戻ってくる。
ああ、良かった、中った。
皆中だ。
もう心は浮き足立っているけれど、最後の動作まで丁寧に。とは、初めて弓道に触れた時の先生の教えだ。
「やったなくっそ！」
「まあだろうとは思ってたけどね！」
無事表彰も終わり、あとはミーティングのため顧問を待つだけとなった状態の我が青学弓道部。
私の他にも、男子が団体で全国。個人では男子2人全国の舞台へと駒を進めた。
そんな私たちのテンションは、それはそれは高いわけで。
「打ち上げいこう！」
「いや気が早すぎだろ」
「全国終わったらにしようぜ」
完全にスイッチオフ状態だ。
先程までの凛々しいみんなはどこへ行ったのか。
だがまあ、私としても嬉しいわけで。
「よっしゃあ！ もうこのまま優勝しかないね！」
「おおっ、やる気十分ですな」
「さすが部長。男前がすぎますね」
「それどんな日本語だよ！」
何が面白いわけでもないのに、相手の小さな一言で笑ってしまう。
くだらない雑談を繰り広げていると、ふと携帯が振動した。
時間を見ようと取り出した瞬間に震えだしたため、すこし肩が上がる。驚いた。
何かなと画面を見ると、一通のメール。
何気なく開いたそれに、心拍数が一気に上昇した。
『不二先輩』
『もう大会終わったかな？
お疲れ様。
全国、いった？』
たったそれだけだった。
全国、いった？
「行きましたよ。先輩」
小さく小さく呟く。
喧騒の中でつぶやいたその声は誰にも届かなかったはずなのに、
「何にやけてるの、A」
仲間に指摘されてしまって内心焦ったことは、内緒だ。
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葉奈(プロフ) - そうですww作者がにこにー推しですww (2015年5月17日 19時) (
レス) id: b46f08eacb (このIDを非表示/違反報告)
ユール - えーと…にこにー？ (2015年5月15日 18時) (レス) id: 63bdae9473 (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - ありがとうございます！がんばって更新しますのでよろしくお願いします！！ (2014年11月30日 18時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
ｙｕｎｙｕｎ - 合格、おめでとうございます。本当に良かったですね。更新、楽しみにしてますね。 (2014年11月30日 15時) (レス) id: 329a32a11c (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - 雪代さん» ありがとうございます！！！ 頑張りますのでよろしくお願いします！ (2014年11月10日 22時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2013年10月27日 21時
