3話 ページ5
em「Aさん。」
そばにはエミさんが立っていた。
『エミさん、私行かなきゃ。チーノだけじゃ止められないよ。』
私が元いた中庭に向かおうとすると、エミさんが手首を掴んで引き止める。
em「チーノ君の魔法は、自身が視認できる範囲である対象と対象とを入れ替えるもの。Aさんの代わりにショッピ君が行ったはずです。それに、100人ほど一般兵も向かっています。」
エミさんは手を離して、まっすぐに私の目を見つめた。
em「敵の目的は貴方です。その目的のAさんが戦線に立つのは、あまりにもリスクが高すぎます。」
『ｯ...』
エミさんの言うことはごもっともだ。
私が捕まるとゲームオーバー同然。
『でも私、だからって1人で逃げるとかしたくないよ。』
em「もちろん分かっていますよ。私も同じ立場ならそうですから。」
ずっと真剣な面持ちだったエミさんが、いつもの穏やかな笑みで頷いてくれる。
em「現在、外との連絡が一切とれません。きっと敵の電子妨害でしょう。」
『今の要塞内にいる戦闘員だけじゃ、少し戦力が足りない。ってことは...』
em「さすがAさん。察しがいいですね。」
『私が外に出てるメンバーに伝えに行く、と。それで私はここから遠ざかることが出来るし、戦力補充も出来る。』
私は得意げにエミさんの言いたいことを言ってのけた。
em「ふふっ、その通りです。裏口の方の魔導二輪車を使ってください。」
『了解。』
エミさんは頷くと、では、と言って私に背を向ける。
『エミさん。エミさんも私と行こう。』
その言葉に彼は振り返って、優しく笑う。
em「非戦闘員だからと言って、後輩を置いて行くことは出来ません。私の魔法は爆弾を扱う魔法です。戦闘にも使えます。」
エミさんは私の手を両手で強く握った。
em「そんな顔しないでください。大丈夫。俺たちはAさんの帰る場所をなくしたりせえへん。」
『そんなに不安そうな顔してた？』
em「してましたよ。」
彼の言葉に私は決意を固めることが出来た。
『じゃあ、此処は頼んだよ。必ず無事で。』
em「はい、お任せ下さい。Aさんも。」
その言葉を最後にエミさんと別れる。
さて、私は私の出来ることを。
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作者名：もっちもち | 作成日時：2022年8月13日 1時
