数学サタデイ【スピンオフ】～Winter’s Tale～ (ページ14)

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除法(2) ページ14

車の通りがそんなに多くない道を歩く。
寒いけれど陽射しは心地よく、冬の空気が美しい。

「ねぇ、本当は今日、どこに連れて行ってくれる予定だったの？」

隣を歩く彼を見上げて私は尋ねた。

「遊園地なんてどうかなと思っていました。」

「ありきたりね。」

私は彼に腕を絡め、はしゃいで歩いた。

はじめに、大きな屋根のパン屋さんに入った。
外観はガソリンスタンドを改装したみたいな作りが斬新だ。
中に入るとログハウス風の店内で、フランス語の童謡が明るく流れていた。

私はトレーとトングを手に取ると、真っ先に奥のコーナーに行く。

「これを、２つ」

小さなカヌレ。私の大好きなお菓子だ。
大好きなお菓子を大好きな人と食べるのってどんな気分だろう、というちょっとした疑問の答えが欲しくなったばかりに、今日はここに来た。

小さな幸せの入った袋を揺らしながら再び寒空の街を歩く。

「本当はピクニックしたかったんだけど、寒いからやめたの。」

「たしかに、真冬にピクニックをするのはなかなか聞かないね。」

キムジュンミョンは、君はピクニックが好きだね、と呟いて私の手からするりと袋を盗んだ。

次に入ったのは小さなお茶屋さん。

「こんなところにお店があったんですね、いつも通るのに気づかなかったよ。」

彼は、店内にぎっしり陳列された紅茶の茶葉の入った透明の瓶を見つめた。

「これでミルクティーが飲みたい、」

私はアッサムの葉を指して見せる。

「僕はこれがいいと思うけどなぁ、」

キムジュンミョンは薔薇の花びらの入ったフレーバーティーを手に取ろうとした。

「それ、見た目は綺麗だけど絶対にミルクには合わないわ。」

私がその手を制止すれば、妙にムキになった彼は結局それを買った。

いつも通る道、いつも行っているお店、変わったことは、彼が一緒にいることだけ。

「今日の私のお出かけプランはこれで終わり。寒いから早く帰りたい。」

そう言うと、キムジュンミョンは驚いた顔をした。

「帰るって、もう？まだお昼なのに。」

「あぁ、えっと、あなたの家にお邪魔しても良い？、ってこと、」

自分の家でもないのに帰るなんて馴れ馴れしい言い回しをしてしまったことに気づいて妙に気恥ずかしくなった。

「もちろんだよ。帰りましょう。」

彼の腕にかけていた右手、そっとすくわれるようにして指を絡めとられる。

うん、と私が首を大きく縦に振れば、胸元のカモミールのネックレスがふわりと揺れた。