数学サタデイ【スピンオフ】～Winter’s Tale～ (ページ11)

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神さまは優しいから、自分のお誕生日になると世界中のみんなにプレゼントをくれるんだよ。

そんなことをどこかで聞いたことがある。

何のためやら、一応枕元に吊り下げられた靴下。
覗いてみるけどもちろんプレゼントなんて入っていない。

「神さまも忙しいのね。」

独り言も大概にして真新しいセーターに腕を通す。

今日は特に予定があるわけではない。

でも、なんとなく外に出たい気分だった。

そう思って私が向かうのは、駅前のカフェ。

「Aちゃん。メリークリスマス」

にっこりと笑うお兄さんの頬には可愛らしいエクボが浮かぶ。

おなじみのクリスマスソングをジャズ風にアレンジしたBGMが流れる店内。

いつもよりいくらか賑やかな気がする。

「メリークリスマス。お兄さん今日もお仕事なんですね。」

来てよかった、と思った。
私がここのカフェに来る1番の理由は彼に会いたいからだもの。

「うん、でもね、僕今日は11時であがりなんです」

そう言って、カフェのお兄さんことレイさんは嬉しそうに自分の腕時計を指してみせた。

時刻は10時57分。

そうだよね、こんなにすてきな人のクリスマスだもん、午後はきっとすてきな女の人過ごすのが普通だよね。

現実を見てしまった気がして勝手に落ち込みそうになる。

「ふふふ、だから3分だけ、僕のことを待っててくれないかな？」